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思い出と試練の地、ハンガロリンク。
ハミルトンとライコネン、2人の克己。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/08/10 08:01
セレモニーで喜びをあらわにするライコネン(左)と、ハミルトン(右)。ともに王者ベッテルを追う位置に付けており、後半戦のデッドヒートが予想される。
毎年、真夏に開催されるハンガリーGPは、路面温度が50℃以上にも達する。コースは曲がりくねり、「ガードレールのないモナコ」とも評される。その過酷な条件下で行なわれる70周のレースで、結果を手にするには他人との競争に勝つ前に、自分との戦いを制しなければならない。
今年のレースは、まさにそんな内容だった。この日、己との戦いに勝ったドライバーは2人いた。ひとりは優勝したルイス・ハミルトンで、もうひとりは6番手からスタートしながら、2位でフィニッシュしたキミ・ライコネンである。
2007年に勃発したハミルトン対アロンソのチーム内抗争。
ハミルトンにとって、ハンガリーGPは特別な場所である。F1にデビューした2007年、予選Q3のアタックでチームの指示に反し、チームメートだったフェルナンド・アロンソの前に出て、先にタイムアタックを開始してしまったのである。
このハミルトンの反逆に、アロンソも妨害行為で応戦。結果、アロンソに5番手降格のペナルティが与えられ、混乱を作ったチームには翌日のレースでコンストラクターズポイントが剥奪されるという重い処分が下された。
いつもと異なる雰囲気でスタートしたレース。しかし、ハミルトンは集中力を乱すことなく、ポール・トゥ・ウィンを飾った。
「様々なことが起きて、時には感情的になったこともあったけど、勝利で締めくくれたことが何よりうれしい」
チームメートとの関係よりも、チームの規律よりも、己の勝利を信じて突き進む若きハミルトンの姿がそこにはあった。