リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
首位がレアルでもバルサでもない?
連勝街道バレンシア、強さの秘密。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2010/10/07 10:30
ビジャの後釜として獲得したFWソルダードはバレンシアで生まれ、レアルでプロデビュー。昨季はヘタフェで26試合出場、16ゴール
意外なチームがリーガの首位に立っている。
開幕から5勝1分けと無敗のバレンシアである。
開幕前にはビジャ、シルバといった昨季までの大黒柱二人を放出。その代役として、ソルダード、アドゥリスらを獲得したが、穴は埋め切れていないと見られていた。ところが、バルセロナ、レアル・マドリーの2強を抑えて首位を走っているのだ。
首位だが……単調なゲーム運びにサポーターがブーイング。
これまでの戦いを振り返ると、バレンシアの対戦相手はバルサやレアルに対する時ほど守備を固めるわけではなく、「勝機アリ」と見て積極的に攻めに出ている。そういった相手に対し、圧倒的な攻撃力を示すのでもなく、接戦の末、勝利をモノにしてきているようである。単調な攻撃とゴールの少なさに、ホームのメスタージャではブーイングが起きるほどだった。
この内容だけを考えると、バレンシアの好調は持続しそうにない。
実際、9月29日に行なわれたチャンピオンズリーグのマンチェスター・ユナイテッド戦では、試合終了間際(85分)にワンチャンスを生かされて今季初黒星を喫している。
しかし、バレンシアは決して百戦錬磨のマンUに圧倒されていたわけではなかったのだ。むしろ、優位に試合を進めてチャンスを数多く作りながら、今季プレミアで不調のマンUにみすみす白星を献上した、という印象が強いくらいだ。
初黒星を喫したマンU戦で見えた新生バレンシアの可能性。
だが、このマンU戦にこそ、新生バレンシアの可能性が示されたと思っている。この試合のバレンシアは、ホームでブーイングを受けた数週間前のチームとは違っていたからだ。
ボールを持った選手を孤立させないよう、周りの選手が絶えずサポートの動きを見せる。パスを引き出す選手と、その次のパスを引き出す選手が現れ続け、マンU守備陣を揺さぶり続けた。
さらにパブロ、マタといった1対1で優位に立てる選手がそこに絡むと、3人目の選手がスペースでボールを受けられるようになり、決めることはできなかったが、多くのゴールチャンスが生まれていたのだ。FW陣がこれらのチャンスを決めていれば、大金星も夢ではなかった。
ソルダード、アドゥリス、ドミンゲスらバレンシアのFWは、揃ってムダ走りを厭わないタイプで、味方選手を孤立させることがない。積極的に動いて自らがボールを受けるスペースだけでなく、仲間が活用するスペースも作り出せる。それによってボールの流れが良くなり、最終的には彼ら自身がゴール前でチャンスを得る場面も増える。