プロ野球亭日乗BACK NUMBER
上原浩治がOKなら、ダルビッシュは?
メジャーで成功する投手の条件とは。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/10/05 10:30
投手としての才能が超一流なのは衆目の一致するところであるダルビッシュ有。ただメジャーへ行くとなると、生活環境の変化やシーズン中のチーム移動の苦労など様々な困難があるのも事実。心身ともにタフでなければいけないが、果たして……
ダルビッシュのポテンシャルは凄いのだが……。
果たしてダルビッシュはメジャーで通用するのか?
投手としてのポテンシャルに関しては心配は無用と思う。
ダルビッシュの才能は、これまでメジャーに挑戦した日本人投手の中でもトップクラスであることは間違いない。エース格の投手と考えるとパワーピッチャーであるかないかということが問題になる。その点では物足りなく映るかもしれないが、ダルビッシュには日本人特有のボールを操る能力の高さがある。
パワーはないかもしれないが、あれだけ真っ直ぐを含めたボールに切れがあり、変化球の球種も豊富なのだ。そして最大の武器として制球の良さまである。
一昨年の北京五輪、昨年のワールド・ベースボール・クラシックと国際試合で日本ほどの成績を残していないことから、メジャー球との相性を危惧する声もある。ただ、昨年のWBCでは13回を投げて20奪三振をマークするなど、ボストン・レッドソックスの松坂大輔投手(14回で13奪三振)や同じく今オフにポスティングでメジャー移籍すると言われる楽天・岩隈久志投手(20回で15奪三振)らを上回る数字を残しているのも事実なのだ。
一流投手の能力を、シーズンを通して肉体が支えられるのか?
ダルビッシュが自分の持ち味を十分に理解して、勝負どころで力勝負を挑むのではなく、変化球をうまく操って相手打者を翻弄することさえできれば、必ず結果を残せる。それだけのポテンシャルを持つ投手だ、ということは断言できるだろう。
ただ、心配なことがないわけではない。
それが肉体の問題だ。
投手としてのポテンシャルを支える肉体が、どこまで持つかということだ。
「ボールやマウンドの違いはピッチングにはさほど影響はしないが、肉体には大きな影響を及ぼす可能性がある」
こう語っていたのは昨年のWBC日本代表・与田剛投手コーチだった。
メジャーの縫い目の高いボールをきちっと握って、制球しようとしたときに肩への負担が増す。傾斜が大きく、固いマウンドは下半身に想像以上の負担をかける。
そういう細かい日本とメジャーの違いにダルビッシュの肉体が耐えて、その才能をさせ切れるか。