ボールピープルBACK NUMBER
「トップ8」の壁が日本を苦しめる――。
メキシコの“レジェンド”の不吉な予言。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2013/06/26 11:45
1930年の第1回サッカーW杯から参加しているメキシコ代表。1970年と1986年のW杯自国開催ではベスト8まで進むが、過去5大会では連続でベスト16敗退となっている。
「世界のトップ8に食い込むため、20年も苦しんでいる」
「まあでも、こうやってイタリアやメキシコ相手にそれなりの試合をできるようになったんだから、日本もずいぶん進歩したでしょう?」
僕はテーブルの向こうで静かに夕食をとり続けるボルヘッティに、自分自身が誰かからそう言ってほしいセリフを語りかける。彼は、たしかにそうだね、と相づちを打ち、それでも、と付け加える。
「ここまでの道のりは、そう難しくないんだよ。むしろ、大変なのはここからだ。君も知っての通り、世界のトップ8、そこに食い込んでゆくために、メキシコはもう20年くらい苦しんでいる。そしてもちろん君の国も、これからその苦しさを味わうことになる」
メキシコが生んだ稀代のストライカーの一人は、そんなえぐいことを優しい口調で語り、にこりと笑って口元をナプキンで拭いた。
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