リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
今こそモウリーニョに進言したい!
レアルを救うのはカナーレスである。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2010/09/24 10:30
U-21スペイン代表の主力でもあるカナーレス。オランダ戦(9月2日)、ポーランド戦(9月7日)と連続ゴールを決め、U-21欧州選手権のプレーオフ出場に貢献した
“次の次”を見通せるカナーレスの特殊能力を活かせ!
しかし、与えられたポジションはセンターハーフ。モウリーニョから与えられた役割は、C・ロナウド、イグアイン、ディマリアの“つなぎ役”だった。この起用法では、カナーレスは持ち味を発揮することはできなかった。
カナーレスが前線に展開したボールを受けたC・ロナウドら3人の選手は、より直線的にゴールへと向かうことを選択し、中盤と前線は大きく間延びした。単独で相手の分厚い守備網に突っ込んでいったレアル攻撃陣は自ら孤立することになり、ゴールが生まれることもなかった。
もし、前述の3人とカナーレスがもっと近い位置でプレーする場面が多ければ、攻撃の内容は変わっていただろう。カナーレスの最大の特徴は、ペナルティエリア内外でのスペースを見極める力だ。ボールを持った選手と、ボールを受けに動く選手だけでは生み出せないスペースを察知することができる。つまり、展開の“次の次”を読めるのだ。これは自身が手本にしているというシルバ、セスク、シャビらと似た特徴だが、カナーレスはこの3人よりもゴールに近い位置、FWやトップ下としてプレーしながら、彼特有の能力を発揮できる。
3部リーグからレアルまで駆け上がった能力は開花するか?
今からちょうど1年前、カナーレスはラシンBチームの一員として、セグンダB(3部リーグ)でプレーしていた。そこから1年でレアルに入団し、レギュラー争いをしている今の状況は、本人が言うように「まるで夢のよう」という状態だろう。
これほど驚異的な超スピード出世を可能にしたのは、彼がピッチで無駄なくプレーできるからだ。展開を読む力と、その過程で生まれるイメージをプレーで表現できるのだから、リーガでも十分通用する。
レアルは個人で試合を決められる選手を揃えている。レアルの真価は、彼らの個人技が連動した時に初めて発揮される。豪華攻撃陣を操るというよりも、ゴールに近い位置でカナーレスと彼らが絡むことで、今のモウリーニョ・レアルにはない“最後の一手”がもたらされると、私は見ている。