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“安全運転”で体操NHK杯5連覇。
内村航平の本当の目標は東京五輪。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2013/06/17 10:31

“安全運転”で体操NHK杯5連覇。内村航平の本当の目標は東京五輪。<Number Web> photograph by AFLO

今秋の世界選手権の目標は個人総合4連覇。「それができれば、種目別はひとつも(決勝に)残らなくていい」とNHK杯後に言い切った。

 6月9日、東京・代々木第一体育館で体操のNHK杯最終日が行なわれた。

 男子を制したのは内村航平だった。これで5連覇。男女を通じ、史上初のことだ。

 しかも、2位に7点差以上の大差をつけての優勝である。あらためて実力を見せつけた内村は、大会を振り返って言った。

「楽に、無難にできたかなと思います」

 そしてこうも語った。

「2位とも点差がありましたし、怪我が再発すると世界選手権に響くので大事をとりました」

 昨年のロンドン五輪後、内村は右肩と右足首を痛め、12月の豊田国際、今春の東京でのワールドカップを欠場した。ようやく怪我が回復し5月の全日本選手権から復帰した。NHK杯が世界選手権代表選考を兼ねているとはいえ、すでに代表に内定している内村にとってあえて無理をする必要もない大会である。だからこの日は難度を下げて演技に臨んだ。それでも、目標の「6種目で合計90点以上」をクリアする91.750点を出し、ただ一人、全種目15点以上をマークした。まさに圧勝と言っていいだろう。

 ただ、無理をしなかったのは、今秋の世界選手権を考慮したからだけではない。3年後のリオデジャネイロ五輪、いや、さらにその先をも見据えているからだ。

ロンドン五輪期間中に生まれた次の目標。

 もともと内村は、ロンドン五輪の期間中にリオデジャネイロ五輪を目標に競技生活を続けていくことを明らかにしていた。2つの「悔しさ」があったからだ。

 ひとつは団体で目標としていた金メダルを逃し、中国に次ぐ2位に終わったことだ。

 すべての試合を終えたあと、内村はロンドンで心境を明かした。

「次の目標が出てきました。この銀メダルが自分を突き動かす原動力になっています」

「振り返ると、苦しい大会でした」

 さらに、中国を倒すためには「演技ごとのスペシャリストを多用するしかないのでは」と提言もした。それだけ、悔しさが残ったのだろう。

【次ページ】 まだ理想の演技ができていないという現実。

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