Sports Graphic NumberBACK NUMBER

<フリースタイルモトクロス天下統一決戦> 東野貴行が日本人初優勝の快挙 ~RED BULL X-FIGHTERS OSAKA 2013 REPORT~ 

text by

梶野仁司

梶野仁司Hitoshi Kajino

PROFILE

photograph byJason Halayko, Predrag Vuckovic, Sebastian Marko/Red Bull Content Pool

posted2013/06/20 06:01

<フリースタイルモトクロス天下統一決戦> 東野貴行が日本人初優勝の快挙 ~RED BULL X-FIGHTERS OSAKA 2013 REPORT~<Number Web> photograph by Jason Halayko, Predrag Vuckovic, Sebastian Marko/Red Bull Content Pool
大阪城西の丸庭園に現れた特設コースは、まばゆい光線に照らされ、
幻想的な雰囲気を醸し出していた。世界中で多くのファンを虜にする
フリースタイルモトクロスの最高峰「Red Bull X-Fighters」。
天守閣をバックに、ライダーたちの非現実的なまでの雄姿が浮かび上がった。

 例年より早めの梅雨入りが発表された5月末、大阪城西の丸庭園内は見ちがえるようになっていた。見慣れた芝生が土で覆われ、各所に鉄製の「ランプ」と呼ばれるジャンプ台が設置されていた。仮設スタンドから一望すると、ライダー達がこれから競い合うコースの奥には天守閣がそびえ立っている。Red Bull X-Fighters Osaka 2013の会場が完成した。

 戦国絵図さながらの景観に、出場するライダーや大会関係者は思わず感嘆の声を上げた。Red Bull X-Fightersが開催されて十数年。念願の日本初開催を心待ちにしていたファンも同様だった。予想を超えた非現実的な空間に誰もが目を輝かせていた。いよいよ大阪大会が始まる。これから起きるビッグイベントに皆が期待を寄せていた。

日本開催を心待ちにしていた佐藤英吾の志を継承するために。

 シリーズ第4戦目となる大阪ラウンドは、これまで国内のシーンを支え続けてきた日本人ライダーにとっても大きな転機になっただろう。昨シーズン総合ランキング5位という結果でシードを獲得した佐藤英吾が、今シーズン開幕前に惜しくもこの世を去り、これまで誰よりも日本開催を心待ちにし、実現に向けて尽力した彼の志を継承する意味を込めて、大会前日には日本人予選が行われた。

 選抜された5名の日本人の中からはドバイラウンドにも出場した鈴木大助がワイルドカードを獲得した。本戦に出場するもう一人の日本人ライダー、東野貴行の存在も忘れてはならない。今や世界のトップライダーとして活躍し、過去にはX-GAMESで優勝経験を持つ彼は6年前からカリフォルニアを拠点としているが、地元は大阪府堺市。これ以上ない舞台に燃えない訳が無かった。

会場を熱狂の渦に包んだ、東野貴行のラン。

 オープニングのセレモニーから、規格外のスケールを感じさせる演出に胸を熱くしながら、ラウンド1がスタートした。ラウンド1は前日の本予選でベスト8入りを逃したライダー達5人によるバトルで、1人のみが勝ち残ることができる。日本人予選を勝ち抜いた鈴木にも期待がかかるが、世界基準のライダーたちは次々に大きなトリックをメイク。鈴木もスタイル溢れるランで持ち味は十分に発揮したが、残念ながらトップと1.8ポイント差で敗退した。

 準々決勝からは1対1のトーナメント戦。

「バリエーション」「難易度」「スタイル」「コースの使い方」「エナジー」といった5つの項目のうち、3つを獲得した方が勝ちとなる。すべての対戦が決勝戦のような組み合わせの中で、'11年シリーズ王者のダニー・トーレス、'12年シリーズ王者のリーバイ・シャーウッドが揃って姿を消すという波乱もある中、安定した実力を発揮したのは東野貴行だった。

 チリの英雄、ハビエル・ビレガスを5-0で圧倒、セミファイナルでは好調のロブ・アデルバーグを僅差でかわし決勝戦に駒を進めた。世界中でも彼にしかできないロックソリッド・バックフリップのキレや、滞空時間の長いホーリーマンといったトリックはもちろん、自信と積極性に満ちあふれたランに会場は熱狂の渦に包まれた。

【次ページ】 大坂夏の陣ファイナルは東野貴行対トム・パジェス。

1 2 NEXT
レッドブル
東野貴行
トム・パジェス
佐藤英吾
鈴木大助
ダニー・トーレス
リーバイ・シャーウッド
ビエル・ビレガス
ロブ・アデルバーグ

モータースポーツの前後の記事

ページトップ