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<フリースタイルモトクロス天下統一決戦> 東野貴行が日本人初優勝の快挙 ~RED BULL X-FIGHTERS OSAKA 2013 REPORT~
text by
梶野仁司Hitoshi Kajino
photograph byJason Halayko, Predrag Vuckovic, Sebastian Marko/Red Bull Content Pool
posted2013/06/20 06:01
大坂夏の陣ファイナルは東野貴行対トム・パジェス。
重力を無視したトリックのオンパレード。その中でもひときわ輝いていたのは、ここまで総合ランキング首位のトム・パジェスだ。
スタートと同時に540フレアインディ、ボルト、スペシャルフリップと、惜しみなく次から次へ異次元のトリックを連発し、会場は割れるような大歓声に。トムもまた、東野と同様、亡き佐藤を兄のように慕っていたこともあり、この大会にかける想いは特別なものだった。準々決勝からその勢いのまま強敵に競り勝ち、決勝戦へと駒を進め、大阪夏の陣ファイナルは東野貴行対トム・パジェスという日本初開催にふさわしい対決になった。
たがいに佐藤を慕う2人のファイナル。少なからず佐藤が導いた運命を感じた。技のデパートのトムか、ハンマートリックの東野か。決勝の幕が切って落とされた。トムは準決勝までと同様ノーミスの完璧なランを披露。一方、東野は最後に持ち技でない360にトライする仰天の展開。着地こそ失敗したが、最後まで攻めのスタイルを貫いた。結果は3-2で東野の勝利。見事日本人初優勝に輝いた。お互い死力を尽くしたランはRed Bull X-Fightersのベストバウトとして後世に語り継がれるだろう。
夢見心地のまま、なかなか家路に就こうとはしない11,000人の観客。
歴史的な勝利を収めた東野はトムのランを讃えながらも、自分に攻める気持ちがあったことが嬉しいと目を細めた。FMXは相手を倒すためだけの競技ではなく、自分の限界に挑戦し自分に勝つことだ、とライダー達は口を揃える。だからこそ限界を超えたアクションに人は声を上げ、拳を突き上げる。
大阪城という舞台で乱舞したライダー達に酔いしれた11,000人の観客は夢見心地のまま、なかなか家路に就こうとはしなかった。