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ドイツ杯決勝バイエルン戦を前に――。
岡崎と酒井が振り返る葛藤の1年。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/06/01 08:03
ドイツ杯準決勝フライブルク戦での岡崎(左)と酒井。6月1日のドイツ杯決勝から3日後に行なわれるW杯最終予選オーストラリア戦には、強行日程での合流が予定されている。
「結局、俺って、どうしてプロになれたかって言ったら」
奇しくも、シーズンが終わりを迎えようとしているこのタイミングで、岡崎は自宅にある雑誌などを整理していた。そのなかで、『サッカーマガジン』での自らの連載を読み返してみて、感じたことがあった。
「結局、こっちに来てからずっと同じようなことをやってきているなって思ったんですよね。苦手な部分に取り組んで、苦手な部分を直して、チームにないピースを自分が埋めて……」
まずは、少し冷静になって、ドイツで自分の取り組んできたことを振り返った。その上で、今度は自らがプロになり、日本代表にまで登りつめられた理由を考えてみた。
「結局、俺って、どうしてプロになれたかって言ったら、自分の得意な部分があったからで。自分の特長として守備が最初に出て、裏に抜ける部分が出てきて、それで点がとれるようになった。重点を置くのはやっぱり、そういう特長の部分なのかなと思ったんすよね」
もちろん、苦手なプレーには継続して取り組んでいかないといけないですよ、と念を押した上で、岡崎はこう説く。
「苦手な部分を伸ばすよりも、得意な部分をさらに得意にしていく。そう考えていけば、気持ち的にも余裕が出るんじゃないかなと思っているんです」
W杯最終予選を控えた二人はバイエルンとの一戦で何を得るのか。
シーズン終盤にそこに気がつけたのは収穫だと言わんばかりに、岡崎の口調には熱がこもっていた。
だから、バイエルンとの一戦を前に、過度の緊張もないが、気が緩むこともない。
「(CLの)決勝戦であの緊張感を経験したなかで、バイエルンはポカール(ドイツ杯)ではどんな感じなんだろうと思いません? リラックスしてやってくるんだろうなって思いますけどね。バイエルンの場合はリラックスした状態のほうが強そうだけど(笑)。まぁ、俺らが最初の攻撃をいかに耐えられるか。全てはそこからッスよ」
ヨーロッパの頂点に立ったばかりのバイエルンと戦う――。世界中のサッカー選手が憧れる試合だ。熱望しても、簡単には実現しない一戦でシーズンをしめくくることが出来るのは、彼らが苦労と苦悩を繰り返してきたことへのご褒美なのかもしれない。
いずれにせよ、他の選手が味わえないようなレベルの相手との試合は、このあとにW杯最終予選という大一番を控えた日本代表選手という立場の彼らにも、間違いなく財産になるはずだ。
「ここまで来たからには、バイエルンが相手でもタイトルを取りたいなと思いますし、その上で良い形で代表に入り込めたらいいのかな」
酒井がそう評した決勝戦は、現地時間の6月1日20時(日本時間2日午前3時)から、首都ベルリンのオリンピアシュタディオンで、華々しく幕を開ける。