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ドイツ杯決勝バイエルン戦を前に――。
岡崎と酒井が振り返る葛藤の1年。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/06/01 08:03
ドイツ杯準決勝フライブルク戦での岡崎(左)と酒井。6月1日のドイツ杯決勝から3日後に行なわれるW杯最終予選オーストラリア戦には、強行日程での合流が予定されている。
ラバディア監督の指示に困惑し続けたシーズン。
ふさぎこんだのには理由がある。
「なんか、『最後の最後まで考えたシーズンだったなぁ』と思ってしまって、情けなくなってしまったというか……。結局、最後まで自分の調子が戻らなかったというか、シーズンに対しての悔しさみたいなものは感じました」
もっとも、穏やかな表情でこう付け加えるのも忘れなかった。
「でも、最終戦のあと3日間オフがあったし、次の日からは忘れてオフを過ごしましたよ!」
右サイドバックを主戦場とする酒井は、チームのパフォーマンスに影響を受けない選手になることを目標に掲げていた。崇高な目標であるし、今後そうした選手になれる可能性を秘めているが、1年や2年で達成されるほど簡単なものではない。
また、チームとしての確固たる戦術もなく、攻守のバランスも乱れることの多いチームにあって、得意の攻撃参加を抑えて守備の穴を埋めようとすると、ラバディア監督から「もっと前に出ていけ!」と指示を受けて困惑したことも、一度や二度ではなかった。むしろ、そうした状況が1年を通して続いていた。
チームのためのプレーとは何か。そもそも、自分は選手としての能力を磨いていきたいのか、チームの勝利に貢献していきたいのか。悩み、考えるばかりの1年だった。
目指すサッカーが見えたことはシーズンを通して1度もなかった。
そもそも昨シーズン(2011-2012)は、1月に酒井が加わるとチームは勢いに乗った戦いを続け、酒井加入後の後半戦だけを見ればドルトムントとバイエルンに次ぐ3位の好成績だった。酒井にとっても、加入した最初のシーズンのリーグ戦で17試合中14試合に出場、サイドバックとして5アシストを記録するなど、順風満帆なシーズンだったことを考えると、今シーズンとの落差は大きい。
もちろん、そうした苦しい1年が酒井の血となり、肉となっていくわけで、貴重な経験だったとも言えるのだが、現時点でそこまで楽観的に振り返るのは難しい。
今季のシュツットガルトは、開幕から迷走を続け、ラバディア監督の解任の噂も流れた末、12位でフィニッシュ。選手の推定総年俸がレバークーゼンと並んでリーグ5位タイというデータに象徴される選手の質がものをいって、“無事に”1部残留を達成することはできたが、チームの目指すサッカーが見えたことはシーズンを通して1度もなかった。
そんなチームにあって、苦悩していたのは岡崎も同じだった。