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ドイツ杯決勝バイエルン戦を前に――。
岡崎と酒井が振り返る葛藤の1年。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/06/01 08:03
ドイツ杯準決勝フライブルク戦での岡崎(左)と酒井。6月1日のドイツ杯決勝から3日後に行なわれるW杯最終予選オーストラリア戦には、強行日程での合流が予定されている。
「いやぁ、ずっと調子は良いんですよ」と岡崎。
昨シーズンはリーグ戦26試合に出場して7ゴール。怪我さえなければシーズン二桁得点を達成していただろう。だが、今シーズンは満足のいく成績は残せなかった。
負傷で離脱した時期があったとはいえ、リーグ戦では25試合に出場して、わずかに1ゴールだ。ポジションは1トップ、右MF、左MF、トップ下を経験したし、試合の流れの中ではダブルボランチの一角のような位置でプレーすることを余儀なくされることもあるなど、起用法は定まらなかった。先発出場が続いたと思えばサブに降格したり、かと思うといきなり先発に抜擢されたり……。
1シーズンのなかで、自らの調子と起用法がフィットしたのは、昨年11月中旬からのおよそ3週間くらいだ。日本代表のオマーン戦で決勝ゴールを決めたあと、ヨーロッパリーグのステアウア戦で2ゴール、1アシストを記録し、翌週のリーグのフュルト戦で決勝ゴールを決めた時期がそれにあたる。
そんな岡崎だが、先週行われた5部リーグのロイトリンゲンとの練習試合ではチームトップの3ゴールを決めており、自らの状態についてはこう話す。
「いやぁ、ずっと調子は良いんですよ。自分のいいところを出せたときにはチャンスになっているんです……」
手応えのあったゲームでの途中交代に悔しさを抑えきれなかった。
5月4日のフュルトとの試合のあと、岡崎はちょっとしたレジスタンスを試みている。FWイビセビッチが出場停止だったこの試合で、岡崎は1トップの位置でスタメンに名を連ねた。
「お前がチームの中で一番良いプレーをしているぞ!」
前半が終わった時点で、コーチからそう声をかけられるほどのパフォーマンスを見せていたにもかかわらず、後半22分にチームで1人目の交代選手としてベンチに下げられてしまったのだ。
手応えはあっただけに岡崎は悔しさを抑えきれなかった。もちろん、監督やチームメイトを批判することなどはなかったが、普段と同じような態度でいれば、途中交代も甘んじて受け入れる選手と評価されてしまうのがこの世界だ。沈黙は悪である。試合後には監督と握手することもなく、パフォーマンスを考えれば交代には納得できないことを態度で示した。
そして、翌週、監督とは話し合いの場が持たれた。与えられた先発の機会を活かそうと必死だったことを岡崎が伝えると、「選手には試合に出れる時期も、出れない時期もある」と諭されたうえに、こう言われた。
「でも、おまえは3回、ボールを失ったから」
歯を食いしばってそれを聞いた岡崎は「結局は、上手くなればいいということ」と前提を口にしたあとに、こう続ける。
「サッカー選手がなんで自信を持ってサッカーができるのかと言ったら、自分の良い部分が出せるからなんですよ。でも、苦手な部分ばかりやらされていたら、どうしてもそれが出来なくなって……」