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5月の雪と初めてのヒッチハイク……。
「まさか」の連続と出会っていく。 

text by

井手裕介

井手裕介Yusuke Ide

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photograph byYusuke Ide

posted2013/05/29 17:00

5月の雪と初めてのヒッチハイク……。「まさか」の連続と出会っていく。<Number Web> photograph by Yusuke Ide

5月のカリフォルニアで「まさか」の雪に見舞われた!

食べたのは、ハンバーガー、ピザ、タコス。

 待望の月曜日は、テントを叩く雨音で目が覚めた。

 前夜、バーガーショップの店員さんが教えてくれた通り、雷の予報が火曜まで続くのだ。この先の区間は3000mを越す山岳エリアになる。雪が残っているらしく、荒天では進めない。

 日本人三人で喫茶店に集結し、ハイカーたちから情報を集め、作戦を練る。結局、その日はテントを撤収し、町のロッジに泊まることとした。3人で折半して1人30ドルほど。

 アイダイルワイルドは小さな町なので、やることはそう多くなく、図書館で現地の雑誌を読んだり、ハイカーを見つけてこの先のことについて相談をしたりして過ごした。

 ちなみに、この町で口にした食事は次の3種類のみ。

 ハンバーガー、ピザ、タコス。ハンバーガーは総計4回食べている。とはいえ、ジャンクなそれではなく、きちんとした料理としてのハンバーガーなのだ。アメリカのハイカーはピザが大好きだが、僕はどちらかといえばハンバーガーの方が好きだ。なにを食べてもチーズが大量なのが気になるけれど。

「この旅をきっかけに、生き方をもう一度考えたい」とGOKUさん。

 日本人三人で食事を囲む機会が多く、GOKUさん、TOYOさんお二方の経験に裏打ちされた面白いお話を沢山聞くことが出来た。

 児童養護施設で働くGOKUさんは、この旅のために仕事を辞めてきたという。「本当は休職扱いにしてもらいたかったんだけどね」という彼はこの旅をきっかけに、生き方をもう一度考えたい、と話していた。

 1日につき3000円ほどの通信料も顧みず、妻子に連絡をとる姿に僕も何かを感じずにはいられない。

 とはいえ今は旅人同士、日本にいる時ほどには年齢を気にせずに接することが出来る。2人は毎食ビールを飲む。僕はケチって水を飲んだ。ところが、毎食ビール代が割り勘にされていたことに後から気づく。GOKUさんは僕に謝り、お金を返してくれる。TOYOさんは「あら、そうだったの」と素知らぬ顔でシェアしたピザを人一倍頬張っている。この野郎~(笑)。

 一食につきチップ込みで10ドルはくだらない。当初立てていた予算計画を大きく上回っている。観光地価格なのだろう。この町に長く滞在する理由はなさそうだと僕は思い始めていた。

【次ページ】 ベーコン揚げ朝飯を作ってくれたTomが再び現れる。

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