ロングトレイル奮踏記BACK NUMBER
5月の雪と初めてのヒッチハイク……。
「まさか」の連続と出会っていく。
text by
井手裕介Yusuke Ide
photograph byYusuke Ide
posted2013/05/29 17:00
5月のカリフォルニアで「まさか」の雪に見舞われた!
歩いている。
犬も歩けばなんとやら、で、パシフィック・クレスト・トレイルを歩いていると、予想以上に多くの出会いがある。ハイカーに出会う度に出自を聞かれ、自己紹介をする。
「今回が初めてのアメリカなんだ」
彼らは皆目を細めて言う。
「それはアメリカの最も良い部分を見ることができる、素晴らしい旅ね」
徒歩というスピード、立ち寄る小さな町、そこで出会う温かい人々。予期せぬ出会いが多いのもまた、ロングトレイルという旅路の魅力なのかもしれない。
「カモン! ハイカー! ソーダにビール、揃ってるぜ」
トレイルはしばしば、エンジェル(トレイルを歩くハイカーを無償で家に泊めてくれたり、食事を提供してくれたりする、まさに天使のようなボランティアの人たち)の家に接近する。サボテンに囲まれた道を延々歩いて行くと、トレイルに標識があった。
「カモン! ハイカー! ソーダにビール、揃ってるぜ。寄ってきな!」
ちょうど水場が近かったので、お言葉に甘えてエンジェルの家にお邪魔することにした。
笑顔でビールを手渡すエンジェル。正直、さほどビールが飲みたかったわけではなかったが、彼らが外国人である僕の反応をじっと見守っているので、えいやっと、バドワイザーを一缶飲み干した。
まさに生き返ったような心地。陽が暮れていくことを気にしつつも、あまり早くに席を立つのも現金かなと思い、いくらか話をする。
庭に停めてあった大型バンで一夜を明かすことに。
出発前に用を足そうと立ち上がると、思いのほか酔いが回っていることに気付いた。気付くのとほぼ同時に、僕は床に倒れてしまった。意識はあった。心配して駆け寄ってくる彼らに自分がお酒に強くないことを伝える。
以前、山小屋で飲んだビールが回り、先輩にラーメンをぶっかけてしまった思い出がよみがえる。山でのアルコールはご法度なのだった。恥ずかしいやら情けないやら。トレイルに戻ろうとするが、身体が言うことを聞かない。
「今夜は泊まっていけ」
大柄なTomに促され、抵抗する力もなく、僕は彼らの庭に停めてあった大型バンで一夜を明かすことになった。
バン、だ。アメリカ映画によく出てくる、あのバン。長い時間、同じ場所に停めてある様子なので、トレーラーハウスといったところか。念の為断っておくと、映画『ピンク・フラミンゴ』的お下劣世界は、そこにはない。あるのは古き良きアメリカの煙ったい薫りと、ランタンが発する優しい光だ。
バンのソファに寝袋を広げて横になる。夜空を車窓から仰ぎ見る。そこは山の峠なので空気が澄んでいるのだ。ハンク・ウィリアムズみたいなカントリーミュージックを遠くに聞いていると、いつの間にか深い眠りに落ちていた。