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メルセデスのテストは違反行為か!?
魔の金曜日にF1界騒然の事件発覚。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2013/05/31 10:30
今年のモナコも赤旗中断やセーフティカーがあり、当然タイヤにも非常に厳しいレースとなっていた。そういうレースで当事者であるロズベルグが優勝したのだから……。
モナコでは伝統的に設けられている金曜日の安息日のことを、こう呼ぶ。
「魔のフライデー」
モナコGPは伝統的にキリスト昇天祭という祝日がある週に開催されていた。キリスト昇天祭は決まった日にちではなく、5月の2週目か3週目の木曜日に設定される。そのため、モナコGPの主催者は少しでも多くのお客さんに来場してもらうため、キリスト昇天祭をグランプリの開始日としている。
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ただし、近年のF1の日程の過密化により、必ずしも開催日は慣例通りではなくなった。例えば、今年のキリスト昇天祭は5月9日だったので、GPウイークとはズレてしまっている。
しかし、世界三大レースのひとつとして人気が高いモナコGPには、FIAも特例を設けさせないわけにはいかないようだ。昇天祭と日程こそ異なれ、モナコGPだけはいまも木曜日から幕を開けるようにしているのだ。
モナコGPが木曜日に開幕する理由に、「金曜日に王室のパーティが開かれるから」と訳知り顔で言う者もいるが、王室主催のパーティが催されるのは土曜日の夜だ。もちろん、モナコではそれ以外にも多くのパーティが開かれ、その中のいくつかは金曜日にも行われるが、それが理由で1日早くグランプリが開幕するわけではなく、「時間が空いたのでやろう」というのが、金曜日のパーティなのである。
したがって、F1ドライバーにとって、この1日は本来、無用の長物。スポンサー主催のパーティに出席したり、メディアの取材、コマーシャル撮影などの雑用をこなさなければならないことから、いつのころからかこの安息日を「魔のフライデー」と呼ぶようになった。
波紋を巻き起こしたメルセデスAMGのタイヤテスト。
今年、その魔のフライデーに、ある事件が起きた。
それは夕方に行われたGPDA(グランプリ・ドライバー協会)の会合の中だった。
GPDAの会合は通常のグランプリでも、金曜日のフリー走行後に行われるドライバーズミーティングに続いて開かれているが、年に一回、モナコGPの金曜日に総会が行われる。どういう経緯だったのかは不明なのだが、その席でメルセデスAMGが5月15日から3日間、スペイン・バルセロナのカタロニア・サーキットでピレリのタイヤテストを単独で行っていたことが発覚したのである。
タイヤテスト自体は年間1000km、これまでも行われてきた。しかし、それは特定のチームが有利にならないよう、スポーティング・レギュレーションで2年落ちのマシンを使用することとなっていた。F1マシンのテスト車両を持たないピレリが過去にトヨタの2009年型F1マシンやルノーの2010年型を使用していたのは、そのためである。
しかし、今回ピレリがメルセデスAMGとともに行ったテストで使用されたマシンは、今年メルセデスAMGがレースで使用しているW04。しかも、ドライバーも過去のテストで起用していた元F1ドライバーではなく、メルセデスAMGの現役2人、ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンだったのだ。