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メルセデスのテストは違反行為か!?
魔の金曜日にF1界騒然の事件発覚。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2013/05/31 10:30
今年のモナコも赤旗中断やセーフティカーがあり、当然タイヤにも非常に厳しいレースとなっていた。そういうレースで当事者であるロズベルグが優勝したのだから……。
ルール違反のタイヤテストにライバルチームは猛反発。
その事実はメルセデスAMG以外のドライバーを伝って、ライバルチームの首脳陣に広がった。
もっとも迅速に対応したのは、フェラーリとレッドブル。この2チームは土曜日の段階で対策を講じ、日曜日の朝にレース審議委員会に抗議文を提出する。
レース後、モナコGPのレース審議委員会は、フェラーリとレッドブル、そしてメルセデスAMGとピレリの関係者を呼んで事情を聞き取ったが、今回の一件がモナコGPの決勝レースに直接関わらないと判断し、処分は行わなかった。しかし、レース審議委員会は「この一件をFIAに報告する」とし、「本件はFIAによって国際法廷に持ち込まれるだろう」と、審議が長引く可能性を示唆している。
メルセデスは正当性を主張するも、FIAは疑念を呈する。
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この一件に対して、メルセデスAMGのロス・ブラウン代表は「2013年型マシンでテストを行うことはFIAへ報告していた」と、違法性を否定。
今回の騒動を受け、FIAは経緯をこう説明している。
「5月初旬、FIAにピレリから現行型マシンを用いたタイヤの開発テストをチームと共に行うことは可能かと問い合わせがあった。
単独サプライヤーとしてピレリがFIAと締結している契約では、競技の公平性を保つため、すべてのチームに対してその機会を申し出た場合に限り、どのチームとでも1000kmのテストを行うことができるとの条項が設けられている。
この連絡があった後、FIAはピレリあるいはメルセデスAMGからテスト実施の可能性に関して詳細を聞いていない。加えて、FIAはすべてのチームが今回のテストに参加する機会を与えられたかどうかについても確認を受けていない」
FIAとしても、暗にピレリとメルセデスAMGが行ったプライベートテストを批判しているようなのだ。
レース後の記者会見で、ロズベルグの母国であるドイツのジャーナリストは、こう質問した。
「バルセロナでのテストは、どれだけ有意義なものでしたか?」
30年前のモナコGPを制したケケ・ロズベルグ。その父に続いて今年モナコGPで優勝したロズベルグは、F1史上初のモナコGP父子制覇を達成。しかし、その偉業は今回の騒動で水を差される結果となった。その発端が金曜日の夕方に開かれたGPDAで自ら発した言葉だったとしたら……ロズベルグにとっては、5月24日はまさに「魔のフライデー」だったに違いない。