濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“観る側”を徹底的に意識した興行で、
立ち技格闘技Krush、札止め続出!
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2013/05/24 10:30
5月12日Krush後楽園ホール大会で寺戸伸近に判定狩ち、-58kgの初代王者に輝いた21歳の武尊(中央)と宮田充プロデューサー(左)。
あくまで観客本位。ランキングも撤廃された。
激しい試合でファンを喜ばせれば、確実にチャンスが与えられる。そうでなければ、どんなにキャリアがあっても前座に回され、試合の機会そのものも減る。Krushにおける競争原理は、あくまで観客本位だ。各階級のタイトルとともに制定されたランキングも、すぐに撤廃となった。
「ウチに関して言えば、5位の選手より2位の選手のほうが偉いってわけじゃないんです。ファイトマネーにも反映されない。選手に目指してほしいのはあくまでチャンピオンベルトとメインイベント。ランキングを少しでも上げるために手堅く勝とうっていう試合では、お客さんも面白くないでしょう。だからやめちゃいましたね、ランキング制は」
勝ち負けは評価の一部分。敗北を喫し、タイトル戦線から遠ざかったとしても、インパクトを残せばしかるべき“場面”が与えられるのがKrushの特徴だ。大会が終わった夜、パンフレットを眺めながら“よき敗者”にどんな展開を作るかを考える時間が一番好きだと宮田は言う。彼が設立したKrushの運営会社の名は『グッドルーザー』である。
試合以外にも多い選手の“仕事”。
Krushでは、試合以外にも選手の“仕事”が多い。頻繁に行なわれる記者会見の多くはファン公開形式。大会当日、試合のない選手は第1試合開始前のトークコーナーや全試合終了後の“お見送り握手会”に登場する。
こうしたファンサービスが充実しているのも、Krushの魅力。だが宮田は、選手への影響も大きいと考えているようだ。
「試合以外の場で、人前に出る経験をどんどんしてほしいんですよ。そのことで、選手はプロとして磨かれていく。実際、会見で話す内容が“頑張ります”“絶対勝ちます”で終わらない選手が増えてきました。服装もどんどんおしゃれになってますね。握手会には“君を応援しているのは君の友だちだけじゃないよ”ということを選手に意識させる意味もあります」