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チェルシーをEL初優勝に導くも……。
最後まで愛されなかったベニテス。  

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/05/21 10:30

チェルシーをEL初優勝に導くも……。最後まで愛されなかったベニテス。 <Number Web> photograph by Getty Images

どことなしか、笑顔がぎこちなかったEL優勝時のベニテス。選手達が喜びを爆発させている中で、その表情が印象的だった。

サポーターが今も求め続けているのは、モウリーニョ。

 サポーターが求める監督は、ずばり、ジョゼ・モウリーニョだ。

 彼らが、会場に持ち込んだ垂れ幕で愛情を示したのも、会場を去りながら合唱したチャントで讃えていたのも、目の前で欧州タイトルをもたらした元リバプール監督ではなく、そのライバルであった元チェルシー監督である。

 たしかに、内容では上回っていたベンフィカを相手に、10分足らずで追いつかれても焦らず、そして諦めず、最後のチャンスを物にした集団としての精神力は、モウリーニョがチェルシーに植え付けた勝者のDNAだ。

 そして、 肝心のアブラモビッチの気持ちも、そのモウリーニョに再び傾いているとされる。

 前回の離任時には、エゴの衝突で顔も合わせなくなっていた監督との関係は、オーナー側からの接触によって修復済み。マンチェスター・ユナイテッド入りの線も消え、新任地では「愛されたい」と言う監督が、「愛されている」と自認するイングランドで選ぶクラブは、いよいよチェルシーしかないと見られている。150億円規模の補強を画策中とも言われる富豪は、現状でも前回のモウリーニョ招聘時より質の高いチームに、少なくとも、エディンソン・カバーニやロベルト・レバンドフスキの名前が上がるセンターFW、マルアヌ・フェライニやサミ・ケディラらが候補と目されるボランチを加える意向とされる。

来季は「スペシャル・ワン」と「パーマネント・ワン」の対決も!?

 EL優勝後の会見に現れたベニテスは、「悪くはなかったと理解してもらえればいい」と、チェルシーでの半年間を振り返った。

 実際は、ファンの「理解」は得られず、オーナーには「良くはなかった」と判断されたことになる。だが、その表情がさばさばしていたように、当人は気にしていないのだろう。元々、あわよくばの来季続投ではなく、ビッグクラブでの現場復帰が狙いだったはずのベニテスは、インテルでの早期解任から2年間のブランクなど心配無用である事実を証明したのだ。チェルシーを除く多数のクラブとそのファンは、暫定監督としての過去半年間を「上々」と評価しているに違いない。

 来季の欧州では、チェルシーで、自らを「Special One(選ばれし者)」と呼んだモウリーニョが、意中の任地に舞い戻る一方で、中傷気味にチェルシーで「Interim One (暫定なる者)」と呼ばれたベニテスも、開幕から強豪で指揮を執っていることだろう。資格十分の「Permanent One (正式なる者)」として。

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