野ボール横丁BACK NUMBER
小笠原道大を札幌で見たい――。
前田智徳と重なる“生ける伝説”の姿。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKyodo News
posted2013/05/20 12:25
空振りの光景まで絵になる小笠原なら……ひと振りに懸ける代打の役割でも十分ファンの大声援を呼べるはずだ。
地域密着型の日本ハムなら、小笠原に有終の美を……。
松井とはいえ、巨人のように選手層が厚く、常勝を義務づけられた球団で、前田のような絶対的なポジションを確立できたかどうかは疑問符が残る。他のスター選手との兼ね合いもあるだろう。若手を使いにくくなるということも当然起こりうる。
かといって松井が巨人以外でプレーするというのはしっくりこない。前田は広島のユニフォームを着ているからこそ、生え抜きだからこそ、あれだけのカリスマ的な支持を集められるのだ。
そこへいくと小笠原は、巨人は無理でもプロ野球人生をスタートさせた日本ハムがある。
日本ハムは広島と同じように地域密着型の球団で、ファンもそこで育ち、夢を与えてくれた小笠原に対し特別な思いを持っている。
小笠原はかつてプロ野球選手のイメージをこんな風に語っていたことがある。
「ひとりでも多くの人が前を向いていけるようなプレーをしたいな、って思いますね。希望にあふれ、よし行こう、って進んでいってもらえるような。僕のプレーを見てそう思ってもらえたら嬉しい」
「代打・小笠原」のコール。盛り上がる札幌のファン。そこで日本ハム時代のトレードマークだった髭を再びたくわえた40歳の小笠原が登場する。
なんといい光景だろう。
ひとりでも多くの人が前を向いていけるように――。
もちろん、もし巨人がもう小笠原と契約を結ばないということになったらの話ではある。最後の数年、もう一度、日本ハムでプレーして欲しいと思うのは私だけではないはずだ。