プレミアリーグの時間BACK NUMBER
王者チェルシー連覇の鍵、
中盤の“バイソン”を見よ!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2010/08/19 10:30
驚異的なスタミナを誇るエッシェン。守備に走り回るだけでなく、破壊力抜群のミドルシュートで攻撃にも貢献する
“バイソン”ことエッシェンの完全復活がもたらす衝撃。
しかし、開幕戦を見る限り、看板である中盤の強さは変わっていない。マイケル・エッシェンの戦線復帰は、強力な新戦力獲得に匹敵するインパクトを持つ。怪我で過去2シーズンの半分ずつを棒に振ったエッシェンの武器は、規格外とも言うべきフィジカルの強さにある。W杯も欠場して膝のリハビリに励み、本人いわく「朝9時から夕方5時まで必死にやった」というトレーニングの成果もあり、“バイソン(野牛)”の異名に違わぬ屈強さを取り戻してピッチに戻ってきた。完全復活を予感させたのは、プレシーズン中のハンブルグ戦でのこと。復帰後初のフルタイム出場で慣らし運転の状態だったが、激しく当る相手DFを3m近くも跳ね飛ばしてドリブルを続ける姿は、まさにバイソンそのものだった。
エッシェンは、本気モードで臨んだウェストブロム戦でも馬力を発揮した。ジョン・オビミケルのサポート役として守備を意識しながらも、ボールを奪えば果敢に自らボールを運ぶ。中盤深くからの突進は、パスが主体のバラックやデコが同じ役目を担った昨季にはなかったオプションとなる。前半終了間際にドログバが決めたチーム2点目となるFKは、エッシェンの突進が奪ったものだ。
中盤のランパードをはじめとする攻撃陣の貪欲さも不変。
2005年の移籍当初から3センターで起用されているエッシェンは、言うまでもなく、中盤をともに支えるランパードとの呼吸も良い。互いに攻守のバランスを取りつつ、攻めるときには攻める。
W杯でプレシーズン開始が遅れたランパードは、カルロ・アンチェロッティ監督によれば「100%まであと2週間」という状態のはずだが、ボックス内に走り込んでパスを受け、チーム4点目をゴール左隅に流し込む姿を目の当たりにすれば、昨季に続いて今季もリーグ戦で20得点以上の期待もできる。
チーム全体のゴール前での貪欲さも昨季と変わっていない。内容を上回る大勝を実現できたのは、冷酷なまでにチャンスをものにしようとする決意があればこそ。先制点は、相手GKの落球から、ミケルとマルダが間髪いれずにシュートを狙って生まれている。後半早々に勝負を決めた3点目も、相手DF陣がクリアをもたつく間にドログバが至近距離から叩き込んだものだ。