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ユベントスを連覇に導いたコンテ監督。
怒れる完璧主義者の次なる目標とは?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/05/15 10:30
自身が監督に就任する以前の2季でともに7位に終わっていたユーべを、就任から2季連続でスクデットに導いたコンテ監督。
勝利のためなら、あらゆる人間を敵に回すことも厭わず。
連覇を達成したユーベには、欧州で名の通ったビッグネームのストライカーはいない。その代わり、インサイドMFとセカンドトップ2人分の働きを同時にこなすMFビダルがいる。
シーズン10得点(37節終了時点)のチーム得点王は、ナポリやミランなど上位陣との対戦で勝負強さを見せつけた。PKキッカーも任され、優勝決定戦となったパレルモ戦でも今季6本目を冷静に決め、スクデットを手繰り寄せた。“闘士”の異名をもつチリ代表MFは、指揮官へ畏敬の念すら抱いている。
「監督はどのようにプレーすればいいか、最後まできちんと説明してくれる。要求は厳しいけれど、すごい指導者だと思う」
勝利のためなら、あらゆる人間を敵に回すことも厭わない。あらゆる者を威嚇し、毒気を放ち続ける指揮官を、ピルロは「猛毒をもつ大蛇のようだ」と喩えた。
スクデット連覇を成し遂げた今、ビッグイヤーへの野心を隠さない。
毒蛇を手なずけるのは容易ではない。コンテは優勝翌日、すぐさまクラブのフロントへ面談を要求した。
ユベントスが目指していた達成目標とは、昨季=EL出場権獲得、今季=CL出場権獲得であり、本来であればスクデット獲得は3年目にあたる来シーズンの目標だった。
それらを大幅に前倒しして達成したコンテは、自身の待遇アップと、翌年の補強内容へ注文を突きつけた。
さらに、イタリアの覇権を磐石にしたコンテはいよいよ「CLを獲りたい」と口にした。コンテの脳裏には、ドルトムントに敗れた'97年大会決勝の苦い記憶がこびりついている。コンテは今季のCL準々決勝でバイエルンに完敗した後、欧州のトップレベルを直に知るためにレアル・マドリー対ドルトムントの準決勝をわざわざ視察している。ビッグイヤーに飢えているのは、誰より監督コンテなのだ。
本人も認める通り、コンテが持つ勝利への執着心は偏執的ですらある。連覇を達成しても、コンテはなおも毒を吐くことをやめない。
最終節が終われば、コンテといえど選手たちを夏のバカンスへ送り出す。だが、選手たちは海辺でも山間でも、心から羽根を伸ばすわけにはいかない。
“ゲスト参加のビーチサッカーだろうが、プライベートのフットサルだろうが、遊びの大会でも優勝せよ”。
指揮官からのお達しは絶対なのだ。