セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ユベントスを連覇に導いたコンテ監督。
怒れる完璧主義者の次なる目標とは?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/05/15 10:30
自身が監督に就任する以前の2季でともに7位に終わっていたユーべを、就任から2季連続でスクデットに導いたコンテ監督。
5月5日、ユベントスは3節を残して29回目のセリエA優勝を決めた。スクデット連覇によって、“貴婦人”は完全にイタリアの盟主の座を取り戻した。
監督コンテの功績は大きい。つねに緊張感が張り詰め、慢心とは無縁だったユーベは開幕から首位を堅持した。完璧主義者の指揮官は一切の妥協を許さず、どんなに優勢にゲームを進めていても、ハーフタイムには中身入りのペットボトルをぶん投げ、ロッカールームを怒号で埋め尽くしながら、チームを叱咤し続けたからだ。
この連覇には、コンテのモチベーションの源である“怒り”が色濃く反映されている。
昨夏、イタリア中を揺るがした国際違法賭博・八百長事件への関与が疑われ、10カ月の監督資格停止処分を受けた。コンテは潔白であることを主張し、「名誉の問題だ」と司法取引を頑として突っぱねた。懲罰委員会とサッカー協会を相手に猛抗議を続け、6カ月の減免を勝ち取った。
ベンチ復帰後も不利な判定が続けば、やはり黙ってはいない。22節ジェノア戦のロスタイムに決勝PKを見逃されると激昂し、審判団へ激しく詰め寄った。「何がフェアプレー精神だ! 恥を知れ!」と毒づいた代償は、2試合の出場停止処分だった。
「サッキに匹敵する天才」――司令塔ピルロが語る指揮官への称賛。
さすがにサポーターからも“コンテの態度は不遜すぎるのでは”と危惧する声が上がったが、現場の選手たちにとってコンテ以上に頼もしい指揮官はいなかった。
「これまで多くの監督の下でプレーしてきたが、コンテは特別だ。実際に接するまでは、ガッツを要求する熱血型の指導者なんだろうと思っていた。ところが、彼の戦術解説や技術指導は想像を超えていた。(アリーゴ・)サッキに匹敵する天才だと思う」
4月末に発売された自伝『我思う、ゆえにプレーする』(“Penso quindi gioco”)の中で、司令塔ピルロはコンテから受けた感銘を隠さない。カルチョの賢者は、トリノ郊外ビノーボ練習場で行なわれる、相手を置かないシャドーボクシングのような独特のトレーニングについても触れている。
「月曜から金曜までくり返されるミニゲームの相手は“目に見えない11人”だ。コンテは自分が納得するまで、俺たちに45分間ひたすら同じ動きを強要する。吐き気を催すほどくり返したなら、生身の11人との対戦でも怖れるものはない」