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フェデラー戦勝利をどう見るか?
錦織圭が詰めた「BIG4」への距離。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAFLO
posted2013/05/13 12:35
フェデラーを破った瞬間の錦織。喜びの反面、この勝利に対する複雑な気持ちが出ている表情にも見える。
生ける伝説――ロジャー・フェデラーの近年の異名である。
それまでは「史上最強のオールラウンダー」と呼ばれることが多かったが、四大大会優勝17回、ランキング1位在位通算302週の絶対王者は、ここにきてさらにもう一つ格が上がったようだ。
その伝説のプレーヤーを、錦織圭が倒した。
5月9日、男子ツアーのマドリードオープン3回戦で、錦織はこの時点で世界ランキング2位のフェデラーに6-4、1-6、6-2の勝利。
準々決勝で世界ランク113位のパブロ・アンドゥハールに敗れたが、大きな山を越えたあとの格下との対戦は案外、難しい。クレーコートを得意とする地元選手に喫した黒星は今後に響くものではないと言っていい。
「彼に勝つことはテニス人生の目標の一つだった」
「フェデラーは憧れの選手。彼に勝つことはテニス人生の目標の一つだった。それが、あまり得意とは言えないクレーコートで成し遂げられるとは思ってもみなかった」
番狂わせの主役は、少しも浮ついたそぶりを見せず、普段と変わらぬ口調で初勝利の感激を言葉にした。
今回、2度目となる対戦で初めての勝利。2011年秋の「スイス室内」でのフェデラーとの初対戦は1-6、3-6と完敗に終わっていた。
当時の錦織にとっては、築き上げてきた自信を打ち砕くほどのショッキングな敗戦だった。このスイス室内で、錦織は世界ランク1位のノバク・ジョコビッチを破っている。故障をかかえ万全ではなかったとはいえ、世界一の選手を倒した手応えは大きく、意気揚々とフェデラー戦に臨んだことだろう。
しかし、まるで歯が立たなかった。