Jリーグ万歳!BACK NUMBER
鉄壁守備が売りの大宮で異彩を放つ、
“危なっかしい男”高橋祥平の魅力。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2013/05/13 10:30
サイズのハンデを読みと反応でカバーする、日本人らしいCB。代表を狙っていることを公言する、発言の直截さも魅力の1つだ。
プロとしての自覚と若者らしい“やんちゃ”な面と。
あの時のことを、本人はこう振り返る。
「ファウルじゃないのは確かだと思うんですけど、それでも、現実を受け止め切れなかったことが自分の器の小ささというか……。もうちょい器が大きければ、チームにも迷惑を掛けずにやれたと思うので。それについては反省しました。ああいうことが二度と起こらないようにしないと……本当にそう思います」
ややうつむき加減でそう語る彼の表情は、真剣そのものである。本心からは納得できない感情を押し殺して言葉を選ぶその姿には、プロ選手としての自覚と、まだ21歳の若者らしいあどけなさに加えて“やんちゃ”な一面も垣間見える。
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もちろん、レフェリーに不満をぶつけて判定が覆るわけではない。怒りに任せてペットボトルを蹴り上げる行為は、アスリートの姿勢として不十分である。しかしその熱さと激しさに、危なっかしさを伴った大きな魅力を感じるのである。
まだ21歳だが、出場試合数100を超える経験を持つ高橋。
高橋は、ジュニア年代から育成の名門・東京ヴェルディの下部組織で育った。
ユースに在籍していた'09年には当時トップチームの監督を務めていた高木琢也の目に留まり、開幕スタメンでJリーグデビュー。17歳4カ月8日でのプレーは、稲本潤一の17歳6カ月25日を更新するJリーグ開幕戦最年少出場記録となった。'09シーズンはその後も出場機会を与えられ、25試合に出場。10シーズンは左サイドバックとしてもピッチに立ち、11シーズンには19歳にしてロンドン五輪を目指すU-22日本代表に合流するなどその能力を高く評価された。
現在21歳。しかし既にJ2を4シーズンも経験し、出場試合数は100を超える。そのポテンシャルと経験に裏打ちされた“伸びシロ”に目をつけたのが、大宮だった。
新天地では開幕からスタメンの座を獲得。大宮にとっては昨季後半のレギュラーだった河本裕之(ヴィッセル神戸)が抜けた穴をどう埋めるかが大きなポイントだったが、高橋はそこにすんなりと収まり、菊地光将と並んでセンターバックを形成した。
しかし、個人的に感じる彼のポジティブな“危なっかしさ”は、若者らしい熱さや激しさだけではない。
身長は180センチ。体重は70キロ。
センターバックとしては決して大きくもなければ、太くもない。むしろ実際に本人を目の前にすると、身長も体重ももう一回り小さく見える。
ただし、高橋は“前”で勝負できる。それがセンターバックとして彼に感じる“危なっかしさ”のポジティブな側面なのである。