プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンUの“便利屋”にはまだ早い!
主役を奪われたルーニーの未来は?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2013/05/05 08:01
ルーニー(奥)に関しては今夏のパリSGへの移籍が4月フランス、イギリス両国のメディアで報じられた。
ファーガソン監督は既に「潮時」と判断しているのか?
ただし、それは、「現役キャリアの終盤には」と当人が付け加えているように、あくまでも将来的な話。選手生命を脅かされるような怪我を負ったわけでもないルーニーが、既に下り坂とは考え難い。
調子の波に乗れなかったことは事実だが、第16節マンチェスター・シティ戦(3-2)での活躍を見れば、いよいよ「ピーク年齢」と思わずにはいられなかった。決勝の1点はファンペルシによるものだが、昨季大敗(1-6)の雪辱戦での立役者は、2得点のルーニーだった。
しかし、肝心のアレックス・ファーガソン監督が、「ピーク後」と意識し始めている節がある。
今季のマンU指揮官は、「円熟期に入る」とルーニーを評しているが、「最盛期を迎える」と言うルーニー本人の表現とは、今後への期待感で温度差がある。
今夏の放出が噂されたのは、レアル・マドリーとのCL16強対決第2レグで、ルーニーがベンチスタートを命じられた3月上旬。だが、昨夏にファンペルシが獲得された時点で、主役としてのルーニーは「潮時」と判断されていたのかもしれない。
昨季のルーニーは、リーグ戦27得点。リーグ得点ランキング2位の数字だが、マンCの逆転優勝は防げなかった。3年前、移籍の可能性を盾に待遇改善を強いられたファーガソンが、週給約3500万円のエースとしては「力不足」とみなし、昨季リーグ得点王を迎えたとも考えられる。まだ戦力としてはルーニーを買っていても、それは、メインストライカーとしてではなく、最前線から中盤の深部まで、マルチロールをハイレベルにこなす、万能性と自己犠牲心の持ち主としてのように見受けられる。
有力選手を獲得候補としてリストアップするファーガソン。
ルーニーは、エバートン時代の2002年10月、アーセナル戦でミドルを叩き込んで、颯爽とプレミアのシーンに登場した。16歳の超新星に国民が抱いた将来像は、ワールドクラスのストライカーだった。
ところが、2年後に加入したマンUで、前線の主役としてルーニーが過ごしたシーズンは、恐らく在籍期間の3分の1にも満たない。10年半の年月を経た今季第35節アーセナル戦(1-1)、ファンペルシの背後で先発したルーニーは、試合終了を待たずにピッチを去った。新エースのPKで追いついたチームが、逆転を狙い続けている最中のピッチを去った。ゴールが欲しい状況でのルーニー交代は、4月のリーグ戦5試合で3試合目。フル出場を許された1試合は、MFを務めたストーク戦だ。
既に来季以降を見据えているファーガソンは、クリスティアーノ・ロナウド、ラダメル・ファルカオ、ロベルト・レバンドフスキらを、獲得候補としてリストアップしていると言われる。
実現すれば、指揮官が「驚異的」と感服するファンペルシでさえ主役の座を脅かされるが、既に脇役のルーニーには、「便利屋」度が高まる事態しか予想できない。
補強予算の一部として売却が検討されるようであれば、ルーニーは、見捨てられた屈辱ではなく、然るべき姿でピークを迎えるための転機との意識で、移籍を前向きに考えるべきだろう。
マンUでの万能ぶりがワールドクラスと評される可能性もなきにしもあらずだが、“ユーティリティ・プレーヤー”と化すには、27歳で迎える来季は早すぎる。