プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンUの“便利屋”にはまだ早い!
主役を奪われたルーニーの未来は?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2013/05/05 08:01
ルーニー(奥)に関しては今夏のパリSGへの移籍が4月フランス、イギリス両国のメディアで報じられた。
「MF転向説」さえ囁かれるシーズンに。
数字では、たしかに、ファンペルシに及ばない。
優勝決定時点で、リーグ戦24ゴール8アシストの新エースに対し、旧エースは、アシスト数は3つ多いが得点数は半分だった。
但し、ルーニーの数字には負傷欠場も影響している。チーム内最多の34試合に出場していたファンペルシとは、9試合の差があった。不動の地位を得たファンペルシは、リーグ戦無得点が続いた2月からの2カ月間も先発で起用され続けた。しかも、最前線を定位置として。これに対してルーニーは、4-2-3-1の2列目のみならず、更に後列でセンターハーフとしても起用された。
数字を残すための環境には相当な違いがあったが、29歳のファンペルシが「ストライカーとしての絶頂期」と讃えられる一方で、27歳のルーニーは、当然のように「MF転向説」さえ囁かれるシーズンとなった。
ルーニーには実際、故障者が続出したMF陣の穴を埋めた過去がある。だが、今季は、優勝前週のストーク戦(2-0)から、緊急事態ではなかったにもかかわらず、ピッチの中央で起用された。
「サッカーIQ」の高さが適応能力の高さとして表れ、出来は上々。コンビを組んだマイケル・キャリックと比べても見劣りはしなかった。
本人も「中央を持ち場にしてもいい」と語っているが……。
キャリックは、ファンペルシに次ぐ出場数を誇る、チーム第2の「原動力」。派手な活躍がない代わりに調子の波もなく、第34節までに1ゴール4アシストと、得点に絡む機会は少ないが、中盤の底で着実にリズムを刻んで安定感を生み出した。
その姿は、4月上旬までの4カ月半をリーグ戦無敗で消化し、その間の18試合中9試合を1点差で制したように、僅差の勝利を重ねて地道にポイントを奪い続けた、今季マンUの代表格とも言える。
中盤の選手として比較したとき、ルーニーは、的確なタッチ、視野の広さ、長短織り交ぜたパス能力で、キャリックに勝るとも劣らない。ストーク戦では、チーム2点目のPKでゴール枯渇期を脱したファンペルシが話題となったが、そのPKは、ルーニーが通したパスをきっかけに奪ったものだ。1点を追うストークが、反撃姿勢を強めた時間帯での意義あるPK獲得だった。
ルーニーが、ボールに触れる機会の多い中央のポジションに適した素養を備えていることは明らかだ。本人も「中央を持ち場にしてもいい」と、昨年に出版された自伝の中で語っている。