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テニス日本代表、デ杯で韓国を撃破!!
錦織不在も添田、伊藤に見えた成長。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2013/04/09 11:30
韓国との2勝2敗で迎えた大会最終日の最終戦。日韓代表チームの雌雄を決するこの試合で完勝し、スタッフらと共に喜びを分かち合った伊藤。
添田と伊藤は、錦織と何が違うというのか?
ナショナルチームの強化態勢のもとで力をつけた二人には、世話になったチームに国別対抗戦で貢献したいという気持ちは当然あるだろう。そして、より大きな動機付けとなっているのは、デ杯の戦いを通して成長したいという真正直な思いだ。
錦織は18歳にしてツアー初優勝を飾り、またたく間に世界に駆け上がった。しかし、超特急ではなく各駅停車の旅で世界にたどり着いたのが添田と伊藤だ。
添田は目標であった世界ランキング100位を前に何度も足踏みし、26歳にして初めてその壁を破った。伊藤は昨年、23歳で初めて100位以内に入ったが、これも毎年着実にランキングを浮上させた結果である。
一段ずつ階段を上ってきた添田と伊藤。過去のデビスカップも、その階段の一つだった。
「この経験を個人戦に生かしたい」
「これをいいきっかけにしたい」
デ杯戦のたびに彼らの口から、そんな言葉が聞かれた。
添田・伊藤ともに因縁深いものがあるデビスカップ。
添田には2007年のワールドグループ・プレーオフ、ルーマニア戦という苦い思い出がある。通算2勝2敗、これに勝てば23年ぶりのワールドグループ復帰が決まるという試合で、添田は勝ち星を手にすることができなかった。
伊藤には2011年のアジア/オセアニアゾーン、フィリピン戦で得た勲章があった。敵地セブ島で行なわれたこの対戦、開幕戦に出場した伊藤は、30度を超える炎天下で5時間25分を戦い抜き、相手のエースを倒したのだ。
こうした一戦一戦が彼らの血となり肉となったことは想像に難くない。
国別対抗戦の重圧は個人戦の比ではない。長く日本のエースを務めた松岡修造も、デ杯には「逃げ出したくなるような重圧」があるという。引退後、彼の口から「僕は責任を果たすことができなかった」という苦い述懐を聞いたこともある。
今回の韓国戦でも、添田がこんな言葉を漏らしている。
「経験があるとかベテランと言われるが、コートに入ればゼロからのスタート。いつも緊張しているし、不安を持ってコートに入っている」
しかし、重く苦しい戦いだからこそ、自分が大きく成長できる機会ととらえることもできる。そこに添田や伊藤はモチベーションを見いだすのだ。