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テニス日本代表、デ杯で韓国を撃破!!
錦織不在も添田、伊藤に見えた成長。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2013/04/09 11:30
韓国との2勝2敗で迎えた大会最終日の最終戦。日韓代表チームの雌雄を決するこの試合で完勝し、スタッフらと共に喜びを分かち合った伊藤。
格下相手に苦戦した添田だが、成長の手応えはあった。
この韓国戦では、二人の明暗が分かれた。
初日、添田は世界ランク742位のチョ・ミンヒョクを倒すのに5セット、3時間50分を費やした。相手は昨年まで2年間の兵役を務め、その間、国際試合には出場できなかった。しかし、そういう選手が思わぬ力を見せるのが国別対抗戦だ。
先に2セットを失った添田は「1セットだけは取って、相手を少しでも疲れさせよう」と考えた。2日目以降、チョ・ミンヒョクと対戦する同僚のために少しでも相手の体力を削いでおきたかったのだ。
勝敗を度外視し、目の前のポイントに集中したことがよかったのか、添田は逆転勝ちを収めた。
しかし、この試合で失ったエネルギーはあまりにも大きく、中1日では回復しなかった。
最終日の第1試合、添田は世界ランク445位のイム・ヨンギュに完敗する。体の切れが悪く、体調が万全でないのは明らかだったが、彼はそれを言い訳にしなかった。
会見では「100%のプレーをしたので悔いはない」と切り出し、相手のプレーをたたえた。さらに添田は、こう続けた。
「体調という理由で片づけたくない。初日の疲労が残っていたのは事実だが、(格下選手を相手に)5セット戦ってしまった自分がいけない。体調を整えることも含めて試合」
デビスカップを修練の場、成長する場ととらえる選手ならではの言葉である。
大会の天王山となる重要な試合で、完勝してみせた伊藤。
伊藤は初日の開幕試合に快勝、チームに勢いをもたらした。
この試合での課題は、フィジカルだった。昨年今年と試合中のけいれんに泣かされることが多く、ここ3カ月はランニング中心に体力強化に励んでいる。「最初のポイントから最後のポイントまで一所懸命にできた」と手応えがあったようだ。
次の出番は最終日の第2試合、より大きな重圧のかかる場面だった。2勝2敗で韓国に逆王手がかかり、伊藤の最終試合がまさに天王山となった。
伊藤は精神的な強さを見せた。
直前の試合で添田が敗れ、流れは韓国にあったが「コートに入ったら自分のプレーをするだけ」と冷静だった。相手のチョ・ミンヒョクも、初日の添田戦の疲労が残り、動きに切れがない。なんとか粘ろうと持久戦を仕掛けるが、伊藤は落ち着いていた。焦らず、強打できるボールが来たときだけ渾身の力でたたく。相手に付き合って必要以上に守備的になることもなかった。
完勝だった。
伊藤はチームメートやスタッフが作った輪の中に飛び込み、喜びを分かち合った。