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敗北も死闘も乗り越え、貫いた美学。
個と組織が融合したスペインの戴冠。 

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中嶋亨

中嶋亨Toru Nakajima

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photograph byFIFA via Getty Images

posted2010/07/12 12:00

敗北も死闘も乗り越え、貫いた美学。個と組織が融合したスペインの戴冠。<Number Web> photograph by FIFA via Getty Images

イニエスタの冷静な右足のシュートが激闘に止めを刺す。

 延長後半11分、左サイドからトーレスが上げたクロスに対し、オランダ最終ラインのクリアはペナルティエリア前に落ちた。これを拾ったセスクが右サイドでフリーになったイニエスタへとパス。トラップの後、迷うことなく右足を振り抜いたイニエスタのシュートは鋭い弾道でGKステケレンブルクを打ち抜き、ゴールネットに突き刺さった。

 左コーナースポットに駆けていったイニエスタめがけて、自陣から、ベンチからスペイン選手が走り寄っていく。歓喜の輪が生まれ、その輪は3分を経過しても解けなかった。それに対してベンチからはデルボスケ監督が「まだ試合は終わっていない。早く自陣に戻れ!」と珍しく声を荒らげていた。

 スペインは残り時間をきっちりと守り切った。

 ロングボールを放り込むオランダの攻撃を冷静に跳ね返し続け、ついに試合終了のホイッスルが鳴った時、主将カシージャスをはじめ、多くのスペイン選手達は涙を流した。

 スイスとの初戦に敗れながらもパスを繋ぐスタイルを捨てず、自らの美学を貫いた。相手が徹底的に対抗策を練ってきても、自らの武器でさらにその上を行こうとしたスペイン。

 彼らの前に立ちはだかった強敵たち……スイス、ホンジュラス、チリ、ポルトガル、パラグアイ、ドイツは常にスペインの戦術を封じることを意識してプレーしてきた。そんな相手との死闘を一つずつ越えていき、ついにワールドカップを勝ち取った。

 類まれな個々の力と極限まで合理的な組織力とを両立させたチームが、美しい攻撃サッカーによって世界の頂点に立った瞬間だった。

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