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問題山積の女子柔道、新監督決定。
新たな船出に、なお残る違和感。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2013/03/25 10:30
3月18日の理事会後に会見を行なう上村春樹会長(手前)と斉藤仁強化委員長。会長、執行部に加え、理事のメンバーの顔ぶれも変わらないことが発表された。
柔道の、大きな転換期なのかもしれない。
3月18日、全日本柔道連盟は理事会を開催した。席上では、女子選手への暴力問題や組織のあり方を検証するために全柔連が設置した第三者委員会による報告をもとに話し合いが行なわれた。そして理事会のあと、改革を進める体制を整えていくことが決まったと発表した。
日本女子代表前監督の園田隆二氏の後任に、女子ジュニアのヘッドコーチである南條充寿氏が就任し、新設する女子強化部長を兼務する強化副委員長にバルセロナ五輪女子56kg級銅メダリストの増地(旧姓立野)千代里氏を起用することも決まった。
女子選手15名による告発に加え、日本スポーツ振興センターから指導者に支給される助成金の一部を全柔連幹部が徴収し、全柔連内部に2000万円以上を蓄えていた問題も明らかになっていたが、それらに対し、全柔連が、ひとつ、方針を示したことになる。
監督の首をすげ替えれば事態は収まるのだろうか?
しかし、理事会では、上村春樹会長をはじめとする執行部、理事全員の留任も決まった。
これだけ問題があった中で、体制になんら変わりないことに、違和感を覚える。
上村会長の「一枚岩となって難局を乗り切ろうということになりました」という言葉も、どこか、内部で起きたことではなく、降り注いできた出来事に対処するとでも言うべき、ニュアンスが感じられる。
また、今回発表された事項についても、オープンな議論はなされていない。
例えば、南條氏らの就任について、どのような経緯で決められたのか。
女子選手たちが告発に踏み切ったのは、ロンドン五輪が終わり、それまでの4年間の強化はどうだったのかの検証のないまま、園田氏、のちに辞任したが男子の篠原信一氏の留任を決めたことが大きい。
本来、出た結果に対して原因の分析がなされ、その上で新体制をどうすべきか決めるという過程があってしかるべきだし、真摯に検証作業が行なわれていたなら、その中で代表の場のありよう、強化のあり方についての反省が行なわれていただろう。検証をしなかったということは、なんの問題もなかったと全柔連が捉えていたということを示していた。
そして告発は起きた。