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問題山積の女子柔道、新監督決定。
新たな船出に、なお残る違和感。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2013/03/25 10:30
3月18日の理事会後に会見を行なう上村春樹会長(手前)と斉藤仁強化委員長。会長、執行部に加え、理事のメンバーの顔ぶれも変わらないことが発表された。
世間の論点は告発自体ではなく、その後の対応にある。
強化の責任を持つ女子の強化委員会は、園田氏の辞任後、開かれていないはずだ。
にも関わらず南條氏の就任は決まった。
それは今回も、必要な過程を経ることがなく、つまり選出の理由もあいまいであるということだ。南條氏らの力量がどうこうではなく、組織としての体質が変わってはいないこと、あるいは根本の部分では変わろうとはしていないことが、うかがえる。
もう一つの問題は、今回の発表にかぎらず、一連の対応の中で、全柔連がメッセージを発信しなかったことだ。
今年1月、告発が明らかになってから、柔道に携わる人、他の競技の関係者、あるいはスポーツファンといった人々から、こうした声を聞いた。
「柔道なんて、みんなあんな風に鍛えられているんでしょう」
「柔道って、結局武道なのか競技なのか。よく分からないですよね」
「連盟の人は、柔道をやっていた人たちなんですか」
それぞれ関心の持ち方は異なっても、それらが示すのは、いろいろな人が柔道に目を向けた機会でもあったということだ。そして柔道界が今後どうしていこうとしているのかにも興味が注がれていた。
全柔連の危機感の希薄さこそが憂慮すべき問題だ。
ふだん、柔道はそこまで意識される競技ではない。
漠然と、日本発祥のものであり、オリンピックでは金メダルを獲って当然の競技だと思われているくらいではないか。決して関心が高いわけではない。
だから、こうした問題が起きれば、格闘技のひとつだから練習でも暴力なんてつきものだろうという思い込みを持つ人もいる。女子選手への暴力問題に浮き彫りになる武道とは言えない姿から、柔道の位置づけへの疑問も生じる。