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“優勝候補”も中身はスカスカだった!
アルゼンチンが馬脚をあらわした大敗。
text by
浅田真樹Masaki Asada
photograph byFIFA via Getty Images
posted2010/07/04 11:20
いつもしたたかで激しく、ときにはズルい。少々の力の差ならはね返す、勝負強いアルゼンチンなら、過去に何度も見たことがある。
だが、これほどまで無残に打ち砕かれたアルゼンチンというのは、正直記憶にない。アルゼンチンにとっては、前回大会に続くドイツとの準々決勝。絶好の雪辱の舞台なるはずだった試合は、こっぴどい返り討ちに遭うという結果に終わった。
開始早々の3分に許したミュラーの先制ゴールに始まり、試合は終始ドイツペースだった。全員が効果的なフリーランを行い、チーム全体でパスをつなぐ意識が高いドイツに対し、アルゼンチンの攻撃はブツ切りで、メッシやテベスのドリブルが目立つばかり。無闇に遠目から放つミドルシュートが、むしろ手詰まりになっていることを印象づけた。
完全に崩し切れずに強引に打つシュートは、コースを消しに来るDFに当たるか、GKの正面へ飛ぶかのどちらか。あわや、という場面はほとんど作れないまま、68分、クローゼに2点目を許すと、試合の流れはさらに大きくドイツへ傾いた。
絶望的な4点差に開き、後半ロスタイムは“温情”の1分。
その後の20分間は、攻撃志向のチームがリードされたときに陥る、典型的な現象がピッチ上で起きていた。すなわち、「早く攻めたい。誰か早くボールを奪ってくれ」という意識が先に立ち、選手全員が少しずつ他人任せになり、守備をサボるようになる。次第にボールに対するアプローチが甘くなり、自陣への戻りも遅くなり、みるみる守備網は穴だらけになっていくのだ。
結局、アルゼンチンは追撃のゴールを決めるどころか、勝利が遠のく追加点をさらに2点も失う始末。0対2の時点でほぼ勝負は決していたが、試合は絶望的な4点差に開いた。
後半のロスタイムは、わずか1分。大差のゲームでありがちな“温情”のロスタイムである。その1分が過ぎようとするとき、メッシが放った渾身のミドルシュートはあえなくGK正面へ。まさにこの試合を象徴するようなシーンの直後に、レフェリーの笛が鳴った。
ここまで順調に勝ち上がり、にわかに優勝候補の呼び声も高くなっていただけに、アルゼンチンにとっては屈辱の大敗であろう。