日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
川口、楢崎、稲本、俊輔、玉田……。
“ドイツW杯組”が支えたチーム力。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoki Nakanishi/JMPA
posted2010/07/03 13:30
ロフタス・バースフェルドは涙に濡れた。
PK戦でパラグアイが5人目まできっちり決めると、ひざをついて祈るように見守っていた岡田ジャパンの面々はその場で崩れ落ちた。遠藤保仁、長友佑都らの目からは涙がこぼれ、岡田武史監督はピッチまで出ていって選手たちと握手を交わした。サブに回った選手たちも駆け寄り、抱擁する姿がピッチの至るところで見られた。
日本サッカー史上初となるベスト8入りはならなかった。
しかし本田圭佑を1トップに置く新しい布陣を用いて、より守備的な戦術に切り替えてきた指揮官の“苦肉の策”が功を奏して、グループリーグで2勝を挙げて決勝トーナメントに進むことができた。ゲームキャプテンを務めた長谷部誠は、ここまで勝ち進めた要因として「チームワーク」を挙げた。
「このチームの強みとしてはチームワークがあった。試合に出ている選手だけではなくて、出ていない選手たちのサポートが本当に素晴らしかった。短期決戦におけるチームワークの重要性を感じることができた」
控えのベテランたちは率先して水やタオルを運んだ。
今回のW杯では経験のある選手がベンチに並んだ。
W杯4大会連続出場の川口能活、楢崎正剛をはじめ、3大会連続の稲本潤一、そして岡田ジャパンのチームづくりで中心的な役割を果たしてきた中村俊輔がいた。ドイツ大会のブラジル戦でゴールを挙げた玉田圭司も控えているという状況だった。彼らが率先してペットボトルの水やタオルを運び、声を出し、チームの一員として働いていたことが、ピッチに立つ選手たちの大きなモチベーションになったことは言うまでもない。
指揮官は26日の練習後、「フォア・ザ・チーム」に徹するベテランの選手たちの貢献ぶりを高く評価していた。
「今は年寄りの選手が頑張ってまとめてくれている。川口がみんなとコミュニケーションをとってね、ナラ(楢崎)も川島にいろんなアドバイスをしてくれている。(中村)俊なんかはハーフタイムに相手の特徴を言って、こうしたほうがいいと。俺より的確なんだよね」
控えに回ったベテランたちは“不満分子”になることなくチームを支えた。彼らの大人の対応が、チームを結束に向かわせたのだった。