野球善哉BACK NUMBER
次の侍ジャパンでは是非とも見たい!
“川崎宗則の後継者”今宮健太の今。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/02/28 10:31
2013年の春季キャンプでの今宮。昨年は球団として21年ぶりとなる10代での開幕一軍入りを果たした。今季、さらなる飛躍を誓う!
気持ちを前面に出すことで己のパワーを最大化する今宮。
明豊高(大分)時代から今宮はそんな感じだった。
己を奮い立たせ、それを周囲に猛烈にアピールしながら戦う時、今宮はすさまじい力を発揮した。
1年秋に九州大会を制覇。「1番・投手」として明治神宮大会で全国デビューし、甲子園には3度出場した。類稀な身体能力を持て余すような、自由奔放な彼のプレースタイルは、時には軽率にも映ったが、スイッチが入った時はとてつもないファインプレーを見せてくれた。
忘れられないのが高校3年夏。“ピッチャーとして”ライバル・菊池雄星(現・西武)のいる花巻東と対戦した、準々決勝でのことだ。
今宮は先発するも4失点で早々に降板し、3塁の守備にまわっていた。試合は8回裏に明豊が逆転し6-4とリードを奪ったが、9回表に花巻東の反撃を浴び、6-6の同点に追いつかれた場面――。マウンドにいた1学年下の山野恭介(現・広島育成)が先輩の勝利を消してしまったことに半ベソをかくと、その刹那、今宮は三塁の守備を捨て(この時、インプレー中で二塁走者の進塁を許している!)、マウンドに向かったのだ。
指揮官の指示を仰ぐことなくマウンドを引き継ぎ、150キロ台を連発。一打逆転の場面だったが、自身の最速154キロをも計測し、このピンチを凌いだ。
終盤の9回にもかかわらず自身の高校時代最速を記録する今宮のパワーに、底知れぬ可能性を感じたものだった。
この試合、結局延長戦の末に敗れはしたが、試合後の今宮はひとつも涙を見せずに、「(降板した)後輩の顔を見ると、アイツには負けを付けさせるわけにはいかないと思った。気持ちで投げた」と語った。171センチの小さな体が、とても大きく見えた。
「あのエラーがあったから自分は成長できた」
そんな今宮だが、プロ入りして3年目となった昨季は、夏場からスタメンの機会を増やすと好プレーを連発した。
シーズン終盤には「(4月のオリックス戦での)あの試合が生きている。あのエラーがあったから自分は成長できた」と語るようになっていた。チームが上位を争う厳しい時期にあっても、「僕がチームを引っ張っていくとは言えません。先輩らの背中を少しでも押していけるように、若さを出していくだけです」とシッカリと自分を客観的に見て話せるまでに成長していたのだ。