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ミラン不利を覆してバルサに完勝!
エルシャーラウィ、“エースの証明”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2013/02/21 14:20
メッシに挑むエルシャーラウィ。すべての得点機に絡んでFWとしての存在感をアピールしただけでなく、守備面でも大きくチームに貢献した。
バルサのボールが、ペナルティエリア内まで届かない!?
失点に動揺するバルセロナのボールポゼッション率は66%に達し、決して悪くはなかった。ただし、ミランの指揮官アッレグリは、バルサDF陣と中盤の間を徹底的に潰す指令を選手たちに出していた。
いくらボールを持たせても、どれだけパス回しを好きにさせても、PA前まではボールを運ばせないし、シュートすらも打たせない。この守備コンセプトをDFコンスタンやDFサパタといった無名の選手たちが、90分間忠実に実行した。
試合後、バルサDFピケは「自分たちのプレーをさせてもらえなかった」とうなだれた。
ニアンがプジョルを吹っ飛ばして、エルシャーラウィにパス!
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2点目も中盤の右サイドでかけたプレスの賜物だった。
後半36分、ボアテンクと2人がかりで奪ったボールをMFモントリーボが前方に放つ。ここから、ミランの若きモヒカン・コンビが恐るべき仕事をした。
6分前に途中出場していた18歳のFWニアンは、バルサPA内でボールを受けると、DFプジョルを吹っ飛ばしながら、中央にいたエルシャーラウィへ右足アウトサイドの憎いパスを送る。
やはりDFに囲まれたエルシャーラウィは、左から走りこむMFムンタリを視界に捉えていた。冷静に右足トラップすると、完璧な浮き球アシストをポンッと蹴りだした。ムンタリの左足ボレーはゴール右隅に突き刺さり、バルサのベンチから血の気を奪った。
その数メートル上に位置するクラブ関係者スタンドでは、大会規定で出られないFWバロテッリが、負傷欠場中のFWロビーニョを神輿状態で担いで、喜び勇んでいた。
バロテッリの加入で、立場が微妙になっていたミランの若きエース。
1月の電撃加入後、群を抜くキャラクターとそのポテンシャルによって、FWバロテッリは瞬く間にミランの中心選手となった。
だが、それによって今シーズンの前半戦をミランの新エースとして引っ張ってきたエルシャーラウィの立場は微妙なものになっていた。ベテランの大量離脱によって窮地に陥ったミランを、今季ここまでに18得点を挙げて、文字通り牽引してきたのはまぎれもなく彼だったにもかかわらず、だ。
名門のエースとしての重責を糧にメキメキと頭角を現してきたエルシャーラウィは、たとえバルサが相手でも成長の歩みを止めなかった。
このバルサとの再戦を、エルシャーラウィは己の存在証明にするつもりだった。