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ステロイドと殿堂。
~野球の名誉を汚した男たち~ 

text by

芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byGetty Images

posted2013/01/13 08:01

ステロイドと殿堂。~野球の名誉を汚した男たち~<Number Web> photograph by Getty Images

通算762本塁打やシーズン73本塁打など数々の金字塔を打ち立てたボンズだが……。

自分に殿堂入りの資格が無いことを明言したマグワイア。

 いや、ステロイドの効き目はもっと甚大だった。

 注射を打つだけで、平凡な投手の球速が15キロ上がり、凡庸な打者の本塁打数が倍増した。ボンズやクレメンスは、使わなくても非凡な選手だったのに、自分だけが超人になろうとした。魔がさした、というより醜悪と責められるべき行為だろう。ワセリンとか紙やすりとかコルク入りバットとか、かつて不正な手段として用いられてきた道具と比べても、癇癪玉と爆弾ぐらいの差がある。

 もうひとつ指摘しておきたいことがある。

 殿堂は、実績や金よりも名誉を重んじる場所である。シューレス・ジョー・ジャクソンやピート・ローズが入れなかったのは、彼らが野球の名誉を汚したと見なされたからだ。ジャクソンなどは濡れ衣だったかもしれないのに、復権はならなかった。最近の例でいえば、マーク・マグワイアが、みずから進んで「私には入所する資格がない」と明言して話題になった。「私はまちがったことをした。一生、罪を背負って生きていくしかない」とまで彼はいった。成績だけなら、マグワイアだって入所してもおかしくない。ボンズやクレメンスは、殿堂入りを望むべきではないだろう。

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