F1ピットストップBACK NUMBER
F1にシーズンオフの文字はない──。
2013年の戦いはすでに始まっている!
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2013/01/07 10:30
昨季最終戦のブラジルGPで年間王者3連覇を決めたセバスチャン・ベッテルを称えるエイドリアン・ニューウェイ。
ハミルトンは新天地メルセデスAMGで新たな挑戦を。
2人目は、マクラーレンからメルセデスAMGに移籍して新シーズンをスタートさせようとしているルイス・ハミルトンだ。
F1はドライバーの腕が試される個人競技である一方、マシンのセットアップやピットストップ戦略ではエンジニアとのコミュニケーションが重要なチームスポーツでもある。'07年のデビュー以来、6シーズン、マクラーレンでF1を戦ってきたハミルトンにとって、'13年は初めて異なるチームでF1を走る特別なシーズンとなる。
それを知ってか、ハミルトンは12月中旬からメルセデスAMGのスタッフとの作業を開始。新天地で戦うことを決めたチャレンジャーは、すでに新シーズンのスタートを切っている。
F1界のドンは“欠けた1ピース”の穴埋めに奔走する。
3人目は、F1の興行を取り仕切るバーニー・エクレストン。
年末年始、F1界のボスの頭は、欠けた1ピースをいかに埋めるかでいっぱいだったのではないか。というのも、通常であれば、12月上旬の世界モータースポーツ評議会で翌シーズンの日程は最終決定されるのだが、昨年暮れの評議会では、いまだ未定のグランプリが残されていたからだ。
それは第9戦ドイツGPの後、7月19日から21日までの10戦目だ。事の発端は、カナダGP後に予定されていたアメリカ・ニュージャージーでの「グランプリ・アメリカ」の主催者が、準備不足から初開催を13年から1年遅らせて14年にしたことだ。グランプリの数が減ると、エクレストンがCEOを務めるFOM(F1マネジメント会社)に入る収入が減るだけでなく、20戦で契約を結んでいたスポンサーとの契約料も自動的に減る。そのため、エクレストンとしてはなんとしてでも、代替えのグランプリを擁立したいところだ。
評議会では「ヨーロッパで別のイベントを開催する」ということで一致。目下、イスタンブールでのトルコGPが最有力候補となっているが、年が明けてもいまだ正式発表はない。F1グランプリを開催するにはサーキット内の施設の準備だけでなく、チケットのセールスや広告活動など大がかりなプロジェクトとなるだけに、開催まで8カ月を切ってもまだ発表されないというのは、異常事態と言っていい。いかに敏腕のエクレストンといえども、時間に抗うことはできない。果たして、20戦目のグランプリを誘致することができるのだろうか。