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金満球団の交替と野球の皮肉。
~MLBの超大型補強は実るのか?~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2013/01/01 08:01
2012年は後半に失速して無冠に終わったが、エンジェルスと超大型契約を結んだハミルトン。
外野は大リーグ最高とも言えるエンジェルスだが……。
エンジェルスも、戦力が明らかに向上した。先発投手が、ジェレッド・ウィーヴァー、C・J・ウィルソン、トミー・ハンソン。一塁がプーホルスで、外野がハミルトン、マイク・トラウト、マーク・トランボ。投手陣はやや不安だが、外野だけなら大リーグ最高と呼んでもよいのではないか。
だが、補強に成功した球団がすんなり優勝できるかといえば、話はそう単純ではない。
まず頭に浮かぶのは、グリンキーとハミルトンがどちらも弱点を抱えていることだ。
大リーグにデビューしたころのグリンキーは、気弱な青年だった。2006年の春などは社会不安障害をわずらい、野球を辞めそうになったこともある。'08年以降は別人のように進化し、'09年にはサイ・ヤング賞も獲得しているが、'10年から'12年までの3年間は、通算41勝、防御率=3.83の数字が示すとおり、超人的な活躍は見せていない。
ヤンキースやレッドソックスが財布の紐を引き締めている理由とは?
もっと心配なのはハミルトンだ。こちらは、なんといっても故障が多い。レンジャーズ在籍の5年間で、平均出場試合数が129。'09年から'11年にかけての出場試合数は合計で343。もちろん、1試合4本塁打の離れ業をやってのける破壊力は強烈なのだが、もうひとつの気がかりは四球数の少ないことだ。いわゆるブンブン丸は、30代になってから苦労することが多い。
とまあそんなわけで、金をかければチームが強くなるとは限らないのが、野球のむずかしいところだ。ヤンキースやレッドソックスが財布の紐を引き締めているのは、その辺の反省も踏まえてのことだろう。私自身、ずっとひいきしているドジャースが強くなるのは大歓迎だし、球界全体の人気向上にも結びつくと思うのだが、果たして思惑どおりにことが運ぶかどうか。
この補強で不十分と考えれば、先発をもう1枚獲りにくる可能性もなしとしない。今後の動きに注目しよう。