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高橋と羽生が振り返る名勝負の裏側。
全日本フィギュア男子、激闘の2日間。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/12/25 11:25
全日本を制した後でも、「(高橋大輔選手に)憧れていますし、まだ(自分は)本当のチャンピオンじゃないなと思っています」とコメントした羽生。
ショートで羽生、フリーで高橋、互いに譲らぬ名勝負!
演技中は、声援も後押しになったと言う。
「お客さんの気持ちも伝わってきましたし、それに返せるように思い切り自分を出せました。ちょっとテンションが上がりすぎて、後半のコレオステップが早く始まってしまったのが若干残念な部分ではあったんですけど(笑)。気合いが入りすぎてのミスだったので悪くはないかなと思っています」
ショートでは羽生が1位、フリーでは高橋が1位と、ともに譲らない名勝負を生み出すことになった。
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3位に入ったのは無良だった。
「全日本、また崩れるんじゃないかという不安もあったけれど、払拭できてよかったと思います」
払拭することができた理由に、グランプリシリーズのフランス大会での優勝をあげた。
「ここまで緊張してもこれだけできるんだ、と自信になりました」
勝つことで得られたものの大きさを示している。
「慢心」の織田、「不安」の町田、「怪我」の小塚。
織田は、ショート5位でフリーを迎えた。
滑り出しは上々だった。冒頭、4回転トゥループに成功する。だが、トリプルアクセル2つでミスが出た。そして総合4位で大会を終えた。
「4回転はショートでも失敗していて、成功させたいなと思っていたので、決まった瞬間に緩んでしまったかなと。2回のトリプルアクセルは練習でもミスしたことがなかったので、慢心があったと思います。緊張感を維持できなかったというか、これで大丈夫だと思ってしまったというか。体力的にもそうですけど、精神面のトレーニングも大切だと思いました」
9位に終わった町田は調子が上がらず、不安をたくさん抱えての試合だったと言う。それがそのまま、演技に反映される形となった。
5位に終わった小塚は様相が異なる。
大会を前に、右足に怪我を負っていたのである。
当の本人は、その影響について問われると「一切言いたくありません」と硬く口を閉ざす。佐藤信夫コーチからは「柔道の山下さんは骨折しながら戦った。それに比べたらたいしたことはない」と送り出されたと言うのだが……。