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高橋と羽生が振り返る名勝負の裏側。
全日本フィギュア男子、激闘の2日間。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/12/25 11:25
全日本を制した後でも、「(高橋大輔選手に)憧れていますし、まだ(自分は)本当のチャンピオンじゃないなと思っています」とコメントした羽生。
メンタルの重要性が浮き彫りになった試合だった。
真駒内で開催されたフィギュアスケートの全日本選手権。男子は12月21日にショートプログラム、22日にフリーが行なわれたが、あらためて、そう感じさせる結果となった。
グランプリファイナルを制した高橋大輔、2位の羽生結弦、5位の小塚崇彦、6位の町田樹。さらにフランス大会で優勝した無良崇人、昨シーズンの故障から復帰を果たした織田信成ら、一段と層の厚くなったのが男子だ。2013年3月にカナダで行なわれる世界選手権代表選考がかかった大会は、厳しい戦いが予想された。
その中で、表彰台の真ん中に立ったのは、羽生だった。
羽生は、ショートプログラムで非公式ながら今シーズンの最高得点となる97.68点を出していた。結果的に、ここで高橋に9点以上の大差をつけたことが勝因となり、285.23点で優勝したが、実はショートは緊張で足が震えるほどだったと言う。その中で、緊張をクリアした理由を聞かれると、こう答えた。
「(ブライアン・)オーサーコーチの言うことを聞いていればなんとかなると、コーチを信じてやりました」
優勝後にも、こう語った。
「(コーチは)試合に対するペース配分がうまいなと感じています。6分間練習とか公式練習とか、自分のことをすごくコントロールしてくれます」
圧巻の演技でフリーでは1位をもぎ取った高橋。
もともと負けず嫌いで、気合いと闘志を前面に出すのが羽生である。ときに、それが災いすることもあっただろう。その部分をコントロールしてくれる存在があったことが、精神面でも好影響をおよぼしている。
総合2位ではあったものの、圧巻の演技でフリーでは1位だった高橋は、ガッツポーズで、自身がつかんだ手ごたえを表した。
それだけの演技ができた理由をこう振り返った。
「いつも気持ち、気合いは入っていますが、今シーズンの中でいちばん気合いが入ったと思います。ショートであれだけ点数を離されてしまったので、思い切りやるしかないというのもありましたし。悔しい部分もあったと思いますので……いつも以上に気合いが入っていました」
悔しさが、強いモチベーションになったのだ。