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<拳の記憶> 長谷川穂積vs.ウィラポン&F・モンティエル 「誇り高き勝利と敗北」
text by
城島充Mitsuru Jojima
photograph byAFLO
posted2012/12/05 06:01
迫り来る不安と対峙したウィラポンとの再戦。
超ハイレベルな攻防を演じたモンティエル戦。
自身が「勲章」と位置付ける2戦の真価に迫った。
好評発売中のNumber PLUS「拳の記憶II~ボクシング不滅の名勝負~」では、日本が誇るチャンピオン7人が激闘を振り返った
「7人のサムライと『魂の一戦』」を掲載。
今回、その中から、長谷川穂積の記事を特別に公開します。
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今回、その中から、長谷川穂積の記事を特別に公開します。
「もっともっと、俺を追い込んでください」
長谷川穂積がそう声を絞り出したとき、トレーナーの山下正人は愛弟子の真意をつかみかねた。難攻不落と言われたウィラポン・ナコンルアンプロモーションを判定で下し、WBCバンタム級のベルトを巻いてから11カ月。初防衛戦をクリアし、ウィラポンとの再戦を目前に控えたときのことだ。
「世界を獲るまでも、獲ってからも、めちゃくちゃきついメニューを長谷川はこなしてきました。このときもふらふらになるまで体をいじめてるのに、何回もそう言うてくるから驚きました」
結果、ジムワークは熾烈を極めた。後に長谷川は〈集中力や緊張感、充実感を持って納得のいく練習が出来たという意味では、ウィラポンとの再戦が一番だったと思う〉と、自著『意志道拓』のなかで振り返っているが、なぜ、あのとき自らを極限まで追い込むことを望んだのか。
10度連続防衛、2階級制覇という勲章をその後のキャリアに刻み、現在はWBC世界フェザー級2位にランクされる男は「めちゃくちゃ不安やったからです」と、当時の心境を振り返った。