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「金1」惨敗からリスタートの柔道。
再建のために“オープン”な検証を!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2012/11/19 10:30
初仕事となる講道館杯の視察に訪れた井上康生新監督(手前)と重量級のコーチに就任した鈴木桂治氏(奥)。「気になった選手やこれから期待したい選手はたくさんいる」と大会を振り返った。
11月10・11日の両日、柔道の講道館杯が行なわれた。
今年度後期の全日本強化選手の選考と、来年の夏に開かれる世界選手権の日本代表選手第1次選考会を兼ねた大会だ。
ロンドン五輪代表の男女計14名は出場しなかった中、男子では60kg級の木戸慎二、73kg級の大野将平、100kg超級の原沢久喜と3名の大学生が初優勝。女子は、48kg級でロンドン五輪代表を逃した浅見八瑠奈が優勝し、新鋭、再起を期してスタートした選手など、多彩な顔ぶれが勝利をつかんだ。
日本代表の新体制も発表された。男子の監督に井上康生氏、コーチには鈴木桂治氏らが就任。女子の監督は園田隆二氏が留任した。
そして、100kg級の穴井隆将と女子78kg超級の杉本美香が、日本代表から退くことも発表された。
ロンドン五輪から約3カ月が経ち、日本柔道はリオデジャネイロ五輪へ向けてのスタートを切ったと言える。
五輪の検証を済ませぬままでの新体制発足は拙速では?
ただ、どこか、不安を抱かせるスタートではある。
それは単に、首脳陣の人事に対するものではない。むしろ、ロンドン五輪の検証がきちんとなされないままにスタートを切ったのではないか。拙速とも言える面があるのではないか。そういう懸念を抱かざるを得ないためだ。
あらためてロンドン五輪を振り返れば、日本は男子が金メダルゼロ、女子は金メダル1個に終わった。
個々には相応の実力を発揮して奮闘した選手がいた。
だが柔道は、どうしても金メダルを期待される立場にある以上、金メダルの数が少なければ、評価されない。また、選手個々が自身の最も高いパフォーマンスであったかと言えば、そうではない選手が多かったのも事実だ。
その結果として、男女を通じ、「金メダル1」に注目が集まり、不振がクローズアップされることになった。