濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「“昔の名前”は卒業しました……」
シュートボクサー鈴木悟の意地と覚悟。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2012/11/11 08:01
11月7日、シュートボクシングの記者会見で意気込みを語った、現シュートボクシング日本スーパーウェルター級王者の鈴木悟。すでにボクサー時代の面影はなく、格闘家としてパンチでの真っ向勝負を宣言した。
11月7日、シュートボクシングの記者会見で珍しい場面があった。ビッグイベント『S-cup』(11月17日、両国国技館)の追加カード発表。総合ファイターである郷野聡寛との対戦が決まった鈴木悟が、司会者の進行を遮って感情を露わにしたのである。
鈴木のプライドを逆なでしたのは、郷野の軽い一言だった。
「(会見で紹介された肩書きが)PRIDEウェルター級GP2006第3位って、もう6年前ですよ。鈴木選手は元ボクシング日本ミドル級王者。お互い“昔の名前”ってことですね」
鈴木は、こう言って食ってかかった。
「僕はもう“昔の名前”じゃなくなってるんでね。卒業したんですよ」
そう、彼は今、シュートボクシング日本スーパーウェルター級チャンピオンなのだ。
「結果を出すまでは絶対にやめねえぞって……」
昨年から年間シリーズ戦、ビッグイベントに連続出場。S-cupトーナメント本戦出場こそ逃したが、看板選手の一人であることは誰もが認めるところだ。
そうなるまでには、かなりの時間を要した。ボクシングで日本王座を9度防衛した実績を引っ提げてK-1に初出場したのは、2005年10月のこと。翌年の大晦日には魔裟斗とも対戦しているが、結果はついてこなかった。ローキックで傷めつけられ、“蹴りあり”の間合いに苦しんでKO負けの連続。キックボクシングで初勝利を挙げたのは、実に4年後の2009年9月だった。
2010年にシュートボクシング参戦を果たすと、ようやく彼は“格闘家”になった。2011年にはタイトルを獲得。今年はS-cupとK-1 MAXで計5度の優勝経験を誇るアンディ・サワーとも拳を交えている。
試合のたびに足を蹴られ、自慢のパンチを当てることができずにマットに這いつくばった4年間。それでもリングから去らなかった理由を、鈴木はこう語っている。
「やめたら“ほら見たことか”って言われるでしょうからね。“ボクシングは弱い”って思われるのも嫌だった。だから結果を出すまで、形を残すまでは絶対にやめねえぞって。負けっぱなしじゃ悔しいじゃないですか」