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<スモールクラブのJ1サバイバル術> サガン鳥栖の浪漫飛行。~“降格候補筆頭”躍進の秘訣~ 

text by

藤島大

藤島大Dai Fujishima

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photograph byMiki Fukano

posted2012/11/16 06:00

<スモールクラブのJ1サバイバル術> サガン鳥栖の浪漫飛行。~“降格候補筆頭”躍進の秘訣~<Number Web> photograph by Miki Fukano

弱者の常道を極度に貫徹するから、簡単に負けない。

 鳥栖はロマンティシズムである。

 空色とピンクのシャツの躍動に接するや、ついジャーナリズムの鉄則である「お客さんになるな」を忘れてしまう。財とぼしき者が独自の方法で金満家を倒す。スポーツ観戦の最大級の醍醐味の具現。みるみる禁断の偏愛は記者席にまで派生する。

 なぜサガンは簡単に負けないのか。

 明確な方法がそこにあるからだ。

 前線のプレスを怠らず、後方では強固なブロックを敷き、ボールを奪えば、反射的にショートカウンターを仕掛ける。

 言葉にすれば簡単で、ことさらに奇抜でもない。いわば弱者の常道でもある。

 ただし、鳥栖はそのことを極度に貫徹する。ほぼそうするのではなく必ずそうする。迷いがない。迷うほどの選択肢もない。

 勝負の世界では、くっきりとした旗を掲げると、相手が先に対策に動いてくれる。その時点で、スモールな側は、よりビッグな側と同じリングに立っている。

 そうではありませんか?

連敗しても、スタイルを徹底しながら問題を解決する。

「鳥栖をおそれること自体が不思議ですね。ありがたいことではあります。相手は鳥栖から勝ち点3を取りたいという気持ちが強い。ただし我々は簡単に負けるチームではない。大切なのは自分たちのサッカーを90分間できるか。研究もされて連敗もしましたけど、このスタイルを徹底しながら問題を解決するつもりです」

 尹監督はそう話して、短く続けた。

「危機感を抱けば、そのことを貫ける選手たちですから」

 信頼。この平凡な二文字こそは成功の核心である。他チームとの比較ではゴージャスとはいいがたい布陣を、かつてのスター選手は信じている。まぎれもなく自分の手で鍛え上げてきたからだ。

【次ページ】 指揮官の“命令”に、藤田が感じた解読不能のオーラ。

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