REVERSE ANGLEBACK NUMBER
18年間挑戦者であり続けた男――。
西岡利晃が貫いた王座以上の美学。
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/10/24 10:30
無念の9回TKOだったが、帰国した西岡は「最高の舞台だった。こんなに大きな試合ができて幸せ。負けたけど、悔いは一切ありません」と穏やかに語った。引退も囁かれるが、本人は「もう少し考えて、自分の口から言いたい」と明言を避けている。果たして……。
18年間、ラスベガスでのビッグマッチを追いかけ続けた。
西岡は日本人ボクサーとして、海外で大きな試合を組み、高く評価されることを目標にしてきた。7回の防衛戦のうち、2回はアメリカでの試合を選んだ。相手はともにランキング2位の実力者でリスクの大きな試合だったが、ラスベガスでのビッグマッチを追いかける者として、躊躇せず敵地に乗り込み勝ち切った。
自分を挑戦者と考えるなら、今回の試合のオッズが1対5と圧倒的に劣勢だったのも望むところだったろう。劣勢を覆し、大きな獲物を獲る。それを追いかけて18年戦ってきた。西岡がデビューしたのは1994年。イチローが日本で最初に200安打を打った年である。