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マガト監督に“干された”長谷部誠。
折れない心と代表へ懸ける意気込み。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2012/10/12 10:30
開幕からの全試合で、ベンチ入りさえかなわない状態にある長谷部。スタンドからヴォルフスブルクの試合を観戦する光景も……。
長谷部誠は、今シーズンこれまでに体験したことのない奇妙な状態に置かれている。
開幕からここまでリーグ戦7試合を戦ったヴォルフスブルクでは、出場機会はおろかベンチ入りメンバーにさえ一度も入っていない。アウェイでの遠征に、かろうじて予備メンバーとして帯同する程度の扱いなのだ。
その理由は、今夏にヴォルフスブルクからイングランドへの移籍を画策したからだ。8月には移籍にむけての交渉に動きだした。さまざまなリスクも、これまでに得た教訓も踏まえた上で。
昨シーズン、長谷部は20試合で先発出場を果たしているのだが、先発出場の試合数としてはヴォルフスブルクに来てから最も多い数字だった。その理由について、昨シーズンの途中に長谷部はこう話していた。
「シーズン前には……地獄なんていったら怒られるけど、それくらい練習が厳しかったんですよ。でも、この練習を乗り越えたら、すごく体力がつくし、開幕のときには良い体になっているというような気持ちでやっていたんだよね。それこそ、これでビーチにいったら、モテるんだろうな、って考えたり(笑)」
本職での出場機会が得られるチームに移籍を望んでいた。
「それくらいポジティブに心を持っていったんですよ。そうしたら、体もすごくポジティブになって。シーズンの最初のころから、チームとしてはあまり結果が出なかったけど、個人としてはすごく調子がよくて、監督からも、『どうした? すごい調子が良いじゃないか』というようなことを何度も言われたし。だからこそ、心の持ちようで、心と体の因果関係みたいなものを感じられたし、そういう部分がすごく自分の中で大きかった」
最高の準備を積むことが、出場機会という結果に結びつくと改めて認識していたのだ。そうした教訓をひとまず置いてまでも、今季開幕前には移籍を望んでいた。昨シーズン、主力としてプレーしたものの、主に出場機会を得られたのは本職ではない右サイドバックとしてだった。試合に出られるのは嬉しいが、本職ではないポジションだという思いが長谷部の中にはあった。