Sports Graphic NumberBACK NUMBER

<激戦のインディ500を振り返る> 佐藤琢磨 「ワンチャンスに賭けた1コーナーの真相」 

text by

今宮雅子

今宮雅子Masako Imamiya

PROFILE

photograph byFutoshi Osako

posted2012/10/05 06:00

<激戦のインディ500を振り返る> 佐藤琢磨 「ワンチャンスに賭けた1コーナーの真相」<Number Web> photograph by Futoshi Osako

一時はトップに立った琢磨だが、残り17周で7番手に。

 500マイルの長いレースの大半は、終盤のリスタート後の勝負に備えてベストの位置、コンディションを築いていく作業である。19位からスタートし、順調にポジションを上げ、レースが後半に入ったところでトップに立って合計31周の間リードした琢磨は、最後の勝負に向かって着実に準備を進めていた。しかしいったん7位まで順位を落としたのは残り17周からのリスタート。

「インディアナポリスの再スタートって、すごく難しいんです。ギアは1速ずつが超ロングで“パーン、パーン、パーン”という感じじゃなくて“ブーーーン、ブーーーン”だから(笑)。2速でスタートするんだけど、ロードコースの5速スタートみたいな感じなんだよね。だからアクセルを踏んだ一瞬のタイミングで、その先がずい分変わってしまうんです。そのタイミングを、僕自身も“うまくいかないなぁ”ってリスタートのたびに練習してました。最後は絶対に決めてやるぞって。

 でも、残り周回が少なくなると、みんなの目の色が変わったのが見えるようで。とにかくコンペティションのレベルが急激に上がるんです。少しでも気を抜くとバーッて抜かれちゃう。最後のひとつ前のリスタートでは前の動きに影響されて勢いを失って、ジャスティン・ウィルソンに抜かれ、ジェームズ・ヒンチクリフに抜かれ、7番手まで落っこちて。残り10周でイエローコーションになったときには、7番手じゃまずいだろ、と思ってました」

最後のリスタートをきっちり決めて、前にいるのはあと2台。

 チームオーナーのひとりであるボビー・レイホールからは、その間「とにかくスーパースタートを決めろ」と、何度も無線が入っていた。

「もう、ボビーがすごくうるさいんですよ(笑)。アメリカではそれまで“行こうとする馬をボビーがうまく制御して、それで結果が出始めた”という論調の記事がけっこう出たりしてたんだけど、あの日は逆だったよ!」

 しかしそんな緊張のスロー走行の後、琢磨は最後のリスタートを決めた。

「まずストレートで誰かを抜いて、その後は1コーナーでライアン・ブリスコーを抜いて、それで4番手。その前にいたTK(トニー・カナーン)は1周かけて抜いて、僕は3番手」

 残り4周で、前にいるのはチップ・ガナッシの赤いマシン2台だけになった。スリップストリームの効果を生かして互いに引っ張り合うため、終始、2台でポジションを交替しながらレースを進めてきたダリオ・フランキッティとスコット・ディクソンである。

【次ページ】 残り2周、不利な状況で琢磨が下したギリギリの判断。

BACK 1 2 3 NEXT

この記事にコメントする

利用規約を遵守の上、ご投稿ください。

佐藤琢磨
ダリオ・フランキッティ
スコット・ディクソン

モータースポーツの前後のコラム

ページトップ