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<特別インタビュー>
2度の地獄を味わった21歳の若武者、
FC東京・米本拓司の復活ロード。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byToshiya Kondo
posted2012/09/22 08:01
FC東京では今季半ばからほとんどスタメン出場を果たしており、ケガのブランクを感じさせないセンスあるプレーを再び見せつけている。
地獄から生還してきた若武者がいる。
米本拓司、21歳。
2度にわたって左膝前十字じん帯損傷という大ケガに見舞われながらも今季ピッチに戻ってきたFC東京のボランチがようやく輝きを取り戻しつつある。
圧巻は横浜F・マリノス戦(9月1日)だった。ボールホルダーに対する厳しいチェックでことごとく攻撃の芽をつぶし、ボールをかっさらっていく。どこまでもしつこく、どこまでも粘り強い。相手が反撃に出ようとするところで、必ずと言っていいほど背番号「7」が立ちはだかっていた。
今、次なるA代表候補というには少々気が早いかもしれない。しかし、彼の類稀なポテンシャルを見るにつけ、どうしても今後に期待を抱いてしまう。
ザックジャパンには、運動量が多く、攻守両面への貢献を求められる“汗かき役”のボランチが、すでに数人名を連ねている。長谷部誠を筆頭に、細貝萌、FC東京で同僚の高橋秀人とタレントもいるにはいるが、U-23より下の世代で試合に起用された選手はまだ誰もいない。つまりザックの心を動かすまでの若手ボランチは、まだ出現していないとも言えるのだ。
A代表を取り巻くそのような状況のなかで、米本が順調に復活の階段をのぼっていけばきっと注目を浴びる一人となるはずである。復活を期す彼の“現在”に迫った――。
「昔は昔で、今は今。昔を見すぎるのはよくない」
「あれは何の言い訳もできないです。試合全体として、自分の出来が良くなかった。マリノス戦のような試合をずっと続けられたらいいんですけど、プレーにまだ波がある。波がある選手だと監督も使いづらいと思うので、もっともっと波のないプレーをしていかないといけない」
米本はそう言って口もとを引き締めた。
「言い訳できない」とは9月15日に行なわれた清水エスパルス戦でのプレー。前半、自陣からボールを前に運ぼうとしたところで大前元紀に奪われ、そのままミドルシュートをぶちこまれてしまったシーンだ。チームは1-1で引き分けたものの、試合から数日経っても悔しさに包まれたままだった。
「1年目の2009年のときと比べたら、運動量のところでまだまだ物足りない。寄せの部分ではだいぶ戻ってきたなというのはあるけど、もっと行けるんじゃないか、と。でも昔は昔で、今は今。昔を見すぎるのはよくないし、筋トレして体重も増えて体も違ってきている。昔みたいにガムシャラに行き過ぎてしまわずに、気持ちでセーブできるようになったのは成長したところなのかもしれません。
自分は膝のケガを2回やっているし、やっぱり今年の目標はケガをしないで1年やり通すということ。そこは肝に銘じておきたい。そのなかで自分のプレーを出していければいいと思っています」