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ボクシング界、48年ぶりの金なるか。
村田諒太の最大の敵はジャッジ!?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byShinji Oyama/JMPA
posted2012/08/11 11:40
南京都高校時代には高校5冠、その後も全日本での優勝5回など国内では圧倒的な実力を誇る26歳の村田。「ここで金メダルを獲るのは自分の義務」とコメントしている。
ボクシングのミドル級、期待の村田諒太(東洋大学職員)が準決勝でアボス・アトエフ(ウズベキスタン)を逆転で下し、決勝進出を決めた。
この試合、1ラウンドはアトエフが優勢に試合を進め、村田は1対4のビハインド。立ち上がりとしては好ましくないが、理由はハッキリしていたという。
「1ラウンドから、相手が距離を潰してきたので驚きました。接近戦を挑んでくるとは自分が研究されている証拠だし、『自分も研究される立場になったんだな』と思いましたけど」
昨年、アゼルバイジャンで行なわれた世界選手権で銀メダルを取っただけのことはある。2ラウンドは村田のパンチがヒットし始め、4対4の五分。しかし3点差は変わらず、最後の3ラウンド目の3分を迎えることになった。
ここから村田のスタミナとテクニックが生きる。アトエフが村田の腕を抱え込む「ホールド」を繰り返し、減点を取られる。流れは完全に村田のペース。試合が終わり、勝者の発表までの時間が長い。
「最後のラウンドはポイントを取ったと思ったし、勝ったと思ってましたよ」
と村田は思っていたそうだが、結局、青コーナーの村田が3ラウンドは8対4の攻勢で、13対12と逆転勝利を収めたのだった。
準決勝に駒を進めた時点で、村田は日本ボクシング界にとって1968年のメキシコ大会以来のメダルを確定させていたが、金メダルがグッと近づいた瞬間だった。
決勝の相手ファルカンは、村田にとってやりやすい相手!?
決勝の対戦相手は、22歳のエスキバ・ファルカン(ブラジル)になる。
トーナメントの反対の山は波乱続きで、世界選手権の王者、イエフゲン・フイトロフ(ロシア)が初戦で地元イギリスのアンソニー・オゴゴ(イギリス)に微妙な採点で敗れたが、これは「地元力」が勝敗に影響した試合だった。
そのオゴゴを、ファルカンが大差で下して決勝まで上がってきた。ファルカンはフットワークは軽くて俊敏、運動能力に秀でていることは明らかだ。
しかし、テクニックでは26歳の村田の方が遥かに上。勝負どころでポイントをいかに積み重ねるか、豊富なスタミナを生かす方法も熟知している。おそらく、準決勝で対戦したアトエフの方が嫌な相手だったのではないか。この関門をクリアした村田は、金メダルにきわめて近い位置にいる。