ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
入江陵介、ロクテ破るも金に届かず。
悔しさの中に見た世代交代への意思。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2012/08/03 12:05
宿敵ロクテ(写真中央)を破り銀メダルに輝くも、クラリー(写真左)に一歩及ばなかった入江。新たなライバル出現に4年後、リオ五輪での雪辱を期す。
「“1”という文字を見たかったです」
最初に4コースを泳ぐクレアリーのスタート台に赤ランプが一つ瞬き、1位であることを示す。続いて赤ランプが2つついたのは……6コースの入江だった。1分53秒78。日本選手権で出した1分54秒03を上回るタイムでの2位だった。そしてロクテが3位。
今大会のロクテは決して本調子のようには見えないが、それでも、ロクテを上回った瞬間だった。
課題を克服する泳ぎもできた。
「今できる100%のレースはできました」
入江自身、泳ぎには満足していた。ロクテにも勝つことができた。それでも、悔しかった。ロクテに勝つことはできても、世界一ではなかった。
「“1”という文字を見たかったです。ロクテ選手には勝てたけど、1位ではないので(昨年の世界選手権と)変化ないです」
確実に階段をひとつ上がったからこそ見えた新たな目標。
目標の金メダルではなかったにせよ、100mの銅メダル、そしてこの日の200m銀メダルと、入江は北京五輪と比べ、たしかな成長を示した。
4年前は、世界ランク3位でメダルを期待されながら、レース前に体調を崩したこと、オリンピックならではの緊張もあって、5位にとどまった。
その直後、「ロンドンではやってやる」と決意し、日々を過ごしてきた。その成果が、思い描いた泳ぎを可能にするメンタリティであり、ロンドンでの2つのメダルだ。
確実に階段をひとつ上ったのだ。
そして上ったところで、上ったからこそ、金メダルという目標が、あらためて見えてきた。