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<日本一のアルパインクライマーが語る(4)> 山野井泰史 「驚異のカムバック、なぜ山に登るのか」 

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柳橋閑

柳橋閑Kan Yanagibashi

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photograph byMiki Fukano

posted2012/08/23 06:00

<日本一のアルパインクライマーが語る(4)> 山野井泰史 「驚異のカムバック、なぜ山に登るのか」<Number Web> photograph by Miki Fukano

行く場所とスケールが変わっても、変わらないもの。

――もういろんな角度から答えをいただきましたけど、最後にあらためてもう一度聞かせてください。なぜ山に登るんですか。

 おもしろい、楽しいとしかいいようがないですね。登ってると楽しいんですよ、心の底から。

 だから理想は……あそこに御前山が見えますね。朝起きて「ああ今日は御前山へ登りてえなあ」と思って、ザックに水筒とお菓子を詰めて行く。そして帰ってきて、「ああいい御前山だった」と思う。それがヒマラヤとか大きい岩壁でもできたら幸せだなということなんです。行く場所とスケールが変わるだけで、心のありかたは変わらない。「今日御前山へ登ってきましたよ!」とみんなに言ってまわる必要性もないしね(笑)。

 蛇足のような質問にも、丁寧にじっくり考えながら答えてくれた山野井さんは、インタビューの翌日、妙子さんとともにヨセミテへ旅立った。

「いま1本登ってみたいルートがあるんです。2年前に1回行って登れなかったから、またやってみたくて。それを想像しただけでワクワクするし、もう興奮状態ですね」と楽しそうに語っていた。

 少年のように──と表現すると凡庸に聞こえるかもしれないが、山野井泰史という人は、まさしくリアルに少年の心を持ち続けている希有な存在なのだと思う。きっと彼は今日も垂直の壁をただひたすら登っているはずだ。10歳でクライミングの魅力に取り憑かれたときと同じように、目を爛々と輝かせて。

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